今週末の新潟競馬場では、「オフサイドトラップカップ」が行われます。オフサイドトラップ。この馬名を聞くと、色々な思いが交錯する人も多いことでしょう。
98年の天皇賞を制した名馬ですが、「サイレンススズカが故障した天皇賞で勝った馬」というイメージあまりに大きいと思います。ある意味有名な天皇賞馬です。最も印象深い新潟記念馬として選出されたのも、多分にその影響があったのだと推察します。
あの天皇賞翌日、スポーツ紙はスズカの予後不良を伝えるニュースで埋まり、勝ったオフサイドの名前は小さいものでした。日刊スポーツでは、大川慶次郎氏のコラムで「最後の3Fは36~37秒台でも楽勝だった」という感じの記載があったと記憶しています。とにかく、「無事ならスズカが勝っていた」という論調。数年後には、心無い競馬ライターから「この年の天皇賞にはほとんど価値がない」と言われてしまう始末です。
しかし、果たしてそうなのでしょうか。私は、スズカがどうであれ、あの天皇賞には例年と同じ価値があり、オフサイドの偉業は全ての競馬ファンから正当に評価を受けるべきだと思います。
脇役馬にスポットライトを当てた柴田哲孝氏の著書「たった一瞬の栄光」を読むと、その思いは一層強くなります。オフサイドを取り上げた項目で、いかにこの馬が苦労して天皇賞の舞台にたどり着いたのかが書かれています。現役時代、常に屈腱炎との戦いがあり、厩務員は恐る恐るオフサイドをターフに送り出していたこと、勝ち負けよりも、無事に回ってきてほしいと思っていたこと。オフサイドだって、いつレース中に故障してもおかしくなかったこと。
大事に大事に使ってきて、ナリタブライアンら同期が引退した後もしぶとく現役を続け、ようやくつかんだG1勝ちだったのです。「無事是名馬」。スズカは本当に可哀想だし、私も今でも最強馬の一頭と信じて疑わないですが、故障で負けるのもその馬の実力。あの天皇賞に限ってはオフサイドが強かった。例えスズカが無事に回ってきても、オフサイドが勝っていたと思います。
久々にオフサイドトラップの名前を目にしたので、こんな文章を書いてみたのでした。
さて、最後に恒例の競馬予想。新潟記念の話題を書いておきながら、小倉2歳Sの方を取り上げたいと思います。本命はゼンノイザナギ。初勝利に3戦を要しましたが、ゲートの出の悪さが原因。3戦とも直線の末脚は目立っており、特に前走は中団から直線で外に出して一気に差し切る味な競馬でした。先行押しきり型のスピード馬が多い中で、最後に飛んできそうな予感がします。