「バンタンデザイン研究所映像デザイン学部」の学生たちが、映画上映会づくりに奮闘している。ありがちな学生映画の学内上映会ではなく、一般映画を学外の劇場で公開するという活動。この11~12月には、学生たちが選んだ知る人ぞ知る“良質映画”を、3つの企画にわけて上映会を開いている。
11月20日には、シネセゾン渋谷でオールナイト上映会「嘘楽園 ~ジャパニーズ・モキュメンタリーの夜~」を開催、日本のフェイク・ドキュメンタリー作品群を一挙公開し好評を得た。12月には、岩井俊二監督らの青春映画を特集する「6memorials」(11~17日/K's cinema新宿)、童話原作のクラシック映画を集めた「フェアリーテイル・シアター」(18日/シネマート六本木)が控える。
上映作品の選定から、配給会社や劇場との交渉、ゲストのブッキング、宣伝活動まで、すべての作業を学生たちが担っている。有料で開催するだけに、収益面の結果も問われる。だからこそ、学生たちの目は真剣だ。
同校は、映画配給や宣伝について学べるコースを充実させていて、このような上映会を5年ほど前から授業の一環として行っている。講師の指導を仰ぎながらも、あくまで学生主導という形で定期的に行われている。
教務スタッフの杉田健治氏が、取り組みのきっかけを説明する。「昔は普通の学内上映会をやっていたんです。でも、それでは学生たちに“学外の人に見せる”意識が高まらなかった。それじゃいけないということで、このような上映会を始めました」。今では、学生たちの姿勢も変わったという。「プロがやることをやってみたという経験が大きいですね。将来的に配給会社や宣伝会社に就職したとき、即戦力になれるはずです」。
同校の講師を務める大竹久美子氏は、普段は映画宣伝プロデューサーとして活躍するその道のプロ。厳しい目線で指導にあたってきた。「何のノウハウもないところから始めたのですが、今では学生たちもよりプロっぽいことがやりたいと言ってくれるようになって、うちのクラスでは本格的な企画コンペをやっています」。一方で「まだまだ宣伝広報の努力が足りませんけどね」と駄目出しも忘れない。
11~12月の上映会に携わる学生たちも取材に応じてくれた。11月に「嘘楽園」を終えた出水亮祐さん(映画配給宣伝・ライター専攻1年)は「ノートで学んだことと現場とは、まったく違う厳しさがありました」と振り返った。「6memorials」スタッフの佐藤優奈さん(映画ビジネス専攻2年)と「フェアリーテイル・シアター」スタッフの中山雅介さん(映画配給宣伝・ライター専攻1年)は、それぞれ12月の開催をアピール。佐藤さんは「35ミリで岩井作品を味わってほしい」、中山さんは「クリスマスシーズンにクラシックの美を堪能して!」。どちらも前売りは好調だという。
今回の“良質映画”上映会は、大作ばかりが注目されがちな今の映画界にあって、世の中にあえて広めたい名画を集めた。選りすぐりの作品には、学生たちの熱い思いが込められている。大竹氏は「この上映会を経験した学生たちには、これから“名画の伝道師”になってもらわなければいけません」と目を細めた。
▼バンタン学生による“良質映画”上映会の詳細は以下のサイトで
「嘘楽園 ~ジャパニーズ・モキュメンタリーの夜~」※開催終了
http://usorakuen.xxxxxxxx.jp/
「6memorials」12月11~17日 K's cinema新宿でレイトショー
http://6memorials.jimdo.com/
「フェアリーテイル・シアター」 12月18日シネマート六本木
http://fairy-tale-theater.jimdo.com/