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インタビュー:上松道夫 テレビ朝日取締役編成制作担当

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インタビュー:上松道夫 テレビ朝日取締役編成制作担当

2008年04月16日
本誌 すべての始まりは「世界水泳」からということですね。その頃、AFC(アジアサッカー連盟)サッカーの放送権も獲得されて、その後も積極的にサッカー日本代表戦を中継、2006年の「Wカップドイツ大会 日本対クロアチア戦」ではテレビ朝日歴代最高視聴率となる52・7%を獲得、“テレビ朝日はサッカー”というイメージが定着したように、サッカーが大きな起爆剤になったのでは。

上松取締役 当時、これからは日本代表戦が貴重なコンテンツになるだろうと放送権を獲っていったのです。高額な放送権でお金もかかりますが、無理をしても獲りにいき、全社あげてバックアップした。そして、それに見合う以上の感動と視聴率を獲得できた。視聴率は本当にインパクトがありましたし、テレビ朝日のステーションイメージアップに繋がった。その成果はすごく大きいですね。そういう意味では、変革にあたってスポーツ物件とは縁が深い。水泳やサッカーだけでなく、フィギュアスケートや昨年のアジア野球・北京五輪アジア地区予選など様々な大型スポーツを中継し好評を得ている。それには、今もスポーツを担当している早河副社長はじめスタッフが、電通や博報堂、スポーツ諸団体と時間をかけて信頼関係を築いていったことが今日に結びついていると思います。社内の結束はますます強まり、次は何をやろうとか、前向きにいろいろな面で波及していった。


プロダクション信頼関係

本誌 番組の改革はどう進めていったのですか。

上松取締役 「視聴率向上プロジェクト」など、いくつかプロジェクトを立ち上げてかなり研究を進めた。それとプロダクションやタレントさんとの関係作りを構築できるよう動いた。これは早河洋副社長と亀山慶二編成制作局長を中心に各チーフプロデューサー、ディレクターがそれぞれのレベルで、本気でプロダクションと向かい合っていった。大事な役者さんやタレントさんに傷がつかないようにいいものを作ろうと。ドラマは特にスペシャル番組をテコにして、テレビ朝日はいいドラマを作っているよと、プロダクションに信頼を持ってもらえるよう取り組んだ。ドラマはテレビ朝日の弱い部分でしたので、それが功を奏していい数字を獲れるようになった。課題だったレギュラードラマも徐々に成果を見せ、「相棒」は高い数字で安定していますし、今年1月からの木曜ドラマ「交渉人」はいいスタートとなっている。

本誌 石原プロの作品など当たりましたね。特に昨年からは積極的に大型ドラマを投入して、「点と線」のほか「天国と地獄」(20・3%)、「白虎隊」(2夜平均17・3%)などいずれも高数字を獲った。

上松取締役 バラエティも時間をかけて、例えば、深夜帯の「ネオバラ」枠でトライアルを重ねて、実績積んだものをゴールデンに上げるようにしている。そこは丁寧に作業している。それは他局もやっていますが、いまテレビ朝日が一番積極的にやっているのではないかと思う。「いきなり!黄金伝説。」はその1つ。今では視聴率15%を獲るまでになりましたが、それまでじっと我慢してやっていたからこそと思う。はじめらかそんなに超有名なタレントが出ているわけではなく、番組とタレントと制作者が一緒に育てていった典型だと思いますね。19時台で15%獲ることが難しくなっている中で貴重な番組に育った。その番組から派生して誕生した「よゐこ無人島の0円生活SP」は昨年の大晦日、NHK「紅白歌合戦」の裏で3時間半編成し11・8%を獲得した。「紅白」の裏でテレビ朝日としては一番高かったのではないかと思います。その出演者と言えば、よゐこの2人とギャル曽根、にしおかすみこらわずか数人なのに、あの豪華絢爛な「紅白」の裏で2ケタをとったのですからスゴイことですよ。いま23時台以降のバラエティは、どこよりも一番充実していると、ここは胸を張って言えますね。


日本一のニュース番組に

本誌 そういう中で、2004年春「ニュースステーション」から「報道ステーション」に改編した。上松取締役が手掛けられましたね。

上松取締役 「報道ステーション」はまもなく丸4年になりますが、いま平均14%ぐらいで安定している。これがコケていたら、プライム2位はあり得なかったと思いますね。立ち上げの時はとにかくプレッシャーが大きかった。やはり久米宏さんのあとですから。古舘伊知郎さんに感謝です。スタート時はあまり数字がよくなかったけれど、「ニュースステーション」で培った信頼と実績を活かし、2年目ぐらいから独自色を発揮して安定するようになった。社内外約100人のスタッフで取り組んでいます。古舘さんは他局の番組をすべて降りて、出演者生命をかける覚悟で臨まれ、本当に敬意を表します。番組が始まる前の集中力はすごいですし、近寄りがたいくらいです。放送前に原稿をすべて頭に入れますから、本番で原稿を見ることはしません。本当に勉強家で仕事が好きな方ですね。

本誌 あの当時大変な注目を集めて、しばらくしてNHKが同じ時間帯にニュースをぶつけてきましたが、それも見事退けました。

上松取締役 あまりおこがましいので、こんなこと外には一切話しませんでしたが、当時、私と古舘プロジェクトの社長の間では「とにかく日本一のニュース番組を作ろう!」と言い合っていたんですよ。いま初めて話しますけど(笑)。まあ、そんな大それた考えを持って取り組んで、それに近いところまではいけてるかなと思っています。

本誌 組織や体制面ではどう変わりましたか。

上松取締役 意志決定を迅速にするため、全社変革推進運動が出来る前に編成と制作を合体し「編成制作局」としましたが、全社変革推進運動を立ち上げてからは、チーププロデューサーや若手にかなり権限を委譲した。組織的にはそれが大きかった。昨年は、編成部長、制作一部、二部の部長が若返った。実績ある人が部長職に就き、リーダーシップをとっている。私も余計なことを言わず見守るようにして、もちろん環境作りはするけれど、彼らの思うようにやってもらっている。彼らも一層責任を持つので、そうしたことの効果も少しはあるのかなと思う。それと、いまバラエティ、ドラマ、報道、スポーツなど総体的に良くなっているので社内の競争意識が生まれている。どこかが良くなれば相乗効果が生まれるし、わるい結果を出した所は以前よりも責任やプレッシャーを感じるようになってさらに奮起するので、いい方向にあります。



上松道夫取締役 編成制作担当の略歴

1948年5月16日生。59歳。
72年4月テレビ朝日入社。主に制作、報道を経て、95年10月からは人事部に2年間、その後97年10月報道センター(部長待遇)に復帰、00年2月編成本部編成制作局長に就任。02年3月編成本部エグゼクティブプロデューサー(EP)、03年2月編成制作局EP、03年12月報道情報局ANNニュースセンターEP、04年1月報道局ニュース情報センターEP、05年6月役員待遇報道局ニュース情報センターEP、07年6月取締役 編成制作担当。現在に至る。
★入社以来、ほぼ一貫して番組制作現場を歩み、ドラマからバラエティ、ドキュメンタリーからニュースまであらゆる番組を経験。04年「報道ステーション」立ち上げに尽力する。


(全文は「月刊文化通信ジャーナル」08年2月号に掲載)

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