インタビュー:大友克洋監督「蟲師」
2007年03月17日
◆オダギリくんはイメージどおり◆――「蟲師」には4人の主要な登場人物がいます。このキャスティングはどのような経緯で決めましたか。「先ずは主人公ギンコ役のオダギリジョーくんから決めました。漫画のキャラクターを実際の役者さんに演じてもらうということになると、かなり肉付けをしなければいけないんですね。1人の人間を造形しなければならないので、当然我々スタッフ側が、ギンコがどういう人間なのかということを1回シミュレーションをします。オダギリくんは我々のイメージどおりでした」
――具体的にどのようなギンコ像をイメージしましたか。「ギンコは蟲の影響により白髪であり、肌はかなり弱いだろうし、直射日光を浴びるのはきついはず。そして明治時代に山間部の村を歩いているということは、かなり不思議な人間なんですよね。その不思議であるはずのギンコを、いかに普通に画面上を歩かせるか。衣装や身に着ける物なども細かに決めて、ギンコは当時の人間としてはかなり影がある感じ、ブラブラ渡り歩いていて、一箇所に定住できない…そのようなキャラクターを造形しました。その時からオダギリくんはそういう感じだよねって、スタッフの中では話していました。オダギリくんは健康的で強靭というよりは、ギンコの役柄に合うナイーブな感じが出せますからね」
◆「明日に向かって撃て!」を意識◆――ギンコと一緒に旅をすることになる虹郎を演じた大森南朋さん、謎の女蟲師を演じた江角マキコさん、文字で蟲を封じる娘・淡幽を演じた蒼井優さんの3人についてはどうでしょうか。「大森くんの虹郎とオダギリくんのギンコを、僕としては1970年代にあった『明日に向かって撃て!』のポール・ニューマンとロバート・レッドフォードみたいな感じにできないかなって思いました。江角さんに関しては、蟲師というのは山の中を移動する人間なので、アスリートでありたいと。ただ綺麗で薄幸な感じではなくて、アスリートのような逞しさ、フィジカル面の強さを感じさせる人が良いなと思って、江角さんにお願いしました。蒼井さんに出演してもらったのは、その日本女性らしさからです。それに、あの時はまだ二十歳前でしたから、少女っぽさもあって適役だったと思います」
――原作は1話完結の物語です。数あるストーリーの中で、虹郎と淡幽が登場する話を選び映画化した理由は何ですか。「その話が特に好きだったというのが率直な理由ですね。あまり劇的ではなく、当時の人間の雰囲気が感じられる話でもありますから。僕はロードムービーというのを以前からやってみたいと思っていて、『蟲師』が明治、大正の頃の山間を舞台にしたロードムービーにできないかと思いました。先ほど申し上げたとおり、虹郎が登場することによって『明日に向かって撃て!』のようなロードムービーらしさが出せるんじゃないかとの狙いがありました。また、淡幽はギンコと重なり合う存在として、登場させたいと思いました。淡幽は蟲に身体を侵されて歩けず、家から出ることができないキャラクターですから、一箇所にいることができないギンコとの対比が際立ちますからね」
◆実写の企画も、アニメの企画も◆――今後も実写作品は作っていきますか。「そうですね。前回のアニメーション『スチームボーイ』は製作期間が長かったですが、実写映画も何本かやりたいと思っていました。企画は色々あります。アニメーションの企画もあるし、実写の企画もあるし。何が先に立ち上がるか分かりませんが、実現に向けて頑張りたいと思っています」