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【大高宏雄の興行戦線異状なし〈特別編〉Vol.165】
15年春スタートにみる興行の循環性の強

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【大高宏雄の興行戦線異状なし〈特別編〉Vol.165】
15年春スタートにみる興行の循環性の強さ

2015年03月20日

 さあ、春興行に突入である。明日21日公開の作品もあるが、春の映画戦線はすでに大きく動いている。ざっと、これまでのスタート時(土日)における各作品の成績を、“興収” 順に羅列してみよう。

▽東宝配給「映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記(スーパーヒーローズ)」=動員55万7310人・興収6億4473万5500円(3月7、8日)365スクリーン
▽ディズニー配給「イントゥ・ザ・ウッズ」=32万8722人・4億2603万8800円(3月14、15日)342スクリーン
▽東宝配給「ストロボ・エッジ」=28万6450人・3億3243万7800円(3月14、15日)294スクリーン
▽東宝配給「風に立つライオン」=11万1217人・1億3269万1300円(3月14、15日)309スクリーン
▽東映配給「映画プリキュアオールスターズ 春のカーニバル♪」=11万2883人・1億3036万3100円(3月14、15日)213スクリーン
▽松竹配給「ソロモンの偽証 前篇・事件」=9万1850人・1億2012万8100円(3月7、8日、先行有料上映分含む)311スクリーン

 2つのことが、まず言える。上位3本を見るかぎり、東宝配給の “定番” アニメ、“定番” ラブストーリーと、ディズニー作品が、圧倒的な強さになっていることがわかる。ディズニー作品から説明すれば、この「イントゥ・ザ・ウッズ」の好ダッシュにより、昨年3月公開の「アナと雪の女王」から数えて、4本目のオープニング興収4億円突破を果たしたことになる。凄いとしか言いようがない。洋画云々を超えて、もはやディズニー・ブランドが独り歩きしている格好だ。

 ディズニーのブランド力でいえば、その広範囲にわたる浸透力と認知力は、「アナと雪」のメガヒット理由の一つではあるが、そのすべてではない。だが、この作品のメガヒットが、ディズニー・ブランドの強化に大きな役割を果たしたことは事実なのである。少しややこしい言い方になるが、「アナと雪」のもつ中身の爆発的な浸透力が、これまでもあったディズニーのブランド力を、より一層親しみやすく強大なものにしたことが大きいのである。

 「アナと雪」→社会現象化→ブランド強化という循環性が以降、「マレフィセント」「ベイマックス」を経て、確実に「イントゥ・ザ・ウッズ」の興行にまで受け継がれているとみていい。映画が、この循環性の “流れ” に乗ったのだ。オープニング成績で、この1年あまりのうちに4本も4億円を突破したのは、ディズニーの大ヒットの系譜のなかでも、ありえなかったことなのである。

 少女コミックの実写映画化である「ストロボ・エッジ」は、同じ原作者の「アオハライド」が、最終興収19億円前後まで数字を伸ばしていて、その延長線上で大ヒットのレールに乗ったと言える。少女コミックが、なぜ人気なのかといった分析はさておき、ここでも興行のある循環性が成立していることを、まずは確認しておこう。加えて、福士蒼汰、有村架純のコンビは、「アオハライド」以上に強力である。25億円を超えることが確実視されており、それは興行の循環性のただなかで、大きな成果に結びついているのだと言える。

 「映画ドラえもん~」は、昨年の「STAND BY ME ドラえもん」のメガヒットが興行の足かせになるどころか、相乗効果的に今回の春興行にいい影響を与えている。客層の幅が、広がっているのだ。ここでも、興行の循環性を感じざるをえない。

 ディズニー作品、東宝配給による定番ラブストーリーと定番アニメ。この二つの強力な興行の形をみて、何ごとかを言うなら、興行の保守化がかつてより進んでいるということであろう。

 保守化とは、映画の中身に、過激な要素、未知的要素などを嫌うことである。この傾向は、昨今の社会事情も含め、いかようにも説明できる。ただここでは、「ソロモンの偽証 前篇・事件」の厳しいスタートに、その “風潮”  が大きな影を投げかけていることを指摘するにとどめておこう。

 

(大高宏雄)

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