ユナイテッド・シネマは愛媛県今治市に、ユナイテッド・シネマ フジグラン今治(6スクリーン、909席)を11月30日(土)オープンする。「運営受託」での出店は今年2カ所目で、入居先である商業施設フジグラン今治を運営するフジからの委託を受けた。
武藤芳彦社長に出店の経緯などを聞いた。
シネマサンシャイン閉館から2カ月のスピード出店
――シネマサンシャイン今治(経営:佐々木興業)が9月末日をもって閉館し、その翌日にUCとしての再オープンが発表されました。
武藤 佐々木興業さんが閉館を発表したのが5月だったと思いますが、その後、フジさんから話が来ました。地元には映画館へのニーズがあり、商業施設全体の集客への影響も考えると引き続きシネコンが必要だとのご意見でした。かつてフジさんと当社は別案件で交渉したこともあり、今回の話が来たようです。
――運営受託でのUCの出店は、ウニクス上里、ウニクス南古谷(いずれも埼玉県)、今年3月オープンのトリアス久山(福岡県)に次いで4カ所目となります。
武藤 当社はネットワーク強化を目指す中で、その手段の一つとして運営受託モデルによる出店を増やしていく方針ですから、今回の今治も良いモデルケースになり得ます。また、郊外型シネコンでのローコストオペレーションを今後の武器にしようと取り組んでいますので、今治は大きなチャレンジになるはずと、8月に契約を交わし、シネマサンシャインの閉館を待って正式発表しました。
――9月末の閉館、そして11月30日の開業ですと、その間、2カ月しかありません。
武藤 フジさんには少しでも早く開業したいという強い希望がありました。また両社で、繁忙期である正月興行、特に「映画の日」である12月1日(日)には間に合わせたいという考えもありました。かなりタイトなスケジュールではありますが、11月30日のオープンを決めました。
ロビーなどのカラーリングを変更、全館デジタル化
――トリアス久山は躯体を残し全面的なリニューアルを行いましたが、今治はどの程度のリニューアルですか。
武藤 先ず、どの部分が手を加えずそのまま使えるかどうか。次に、使える部分についてはUCらしさを発揮できる変更を加えるかどうか。こうした二段階で進めました。変更したのは主にエントランス、ロビー、廊下などのカラーリングです。当社の豊洲や浦和、前橋のようにダーク系も使ったシックでシンプルなデザインにしました。一方、各シアター内はコンディションが良かったため手入れはせず、座席もそのまま使うことに決めました。劇場内は完全にデジタル化し、リアルDの3Dシステムを2スクリーンに導入します。
――従業員は、どのように手配しますか。
武藤 支配人およびマネージャーは当社から派遣します。パートタイマーについては、シネマサンシャイン時代に働いていた方で希望する場合はご紹介いただき、また、地元で募集もしています。今治市内には大学がないため大学生の応募は少なく、主婦やフリーターの方が中心になると思います。
――ローコストオペレーションは、どのように実現させますか。
武藤 チケット販売についてはATM(現金自動発券機)を設置して対応します。導入数は2台を予定し、他の劇場(金沢3台、トリアス久山5台)と比べると少ないのですが、想定動員数をもとに決めました。前売券等の対応を行うボックスは設置しますが、ボックススタッフは常駐ではありませんので、自動化されたオペレーションで運営していくことになります。金沢とトリアス久山ではお客様はATMを問題なく使いこなしており、人員配置などが効率化され収益にも貢献しています。
――周辺に競合館はありますか。また、どのくらいの成績を見込みますか。 武藤 今治駅から今治港方面に向かう従来の繁華街にアイシネマ今治(2スクリーン)がありますが、あちらは単館系番組を中心とするミニシアターですから、シネコンとは棲み分けができます。今治市内の商業は、郊外立地の2つの大型店舗(フジグラン、イオン)が中心となります。フジグランには固定客がしっかりとついていますし、また、目の前には今治タオルの資料館や工房があるテクスポート今治があるなど、フジグラン周辺は市内でも特に人の集まるエリアです。シネマサンシャイン時代と同程度(2012年動員12万人)をまず確保し、さらに上を目指します。
――委託元であるフジとは、どのような協力態勢をとっていますか。
武藤 フジさんはフジグランのお客様へのサービス向上を考えていて、その一つとして、フジグランの会員制度であるエフカ会員を対象に映画の鑑賞料金を割引きます(一般1800円→1500円)。地元の新聞やテレビではシネコンの復活が好意的に取り上げられ、注目度も高いと感じています。オープンに向けては、地元局でのCM、定例の折り込みチラシなどフジさんの持っている広告枠をふんだんに使って告知してもらう予定です。また、行政や市民とのつながりをより一層強めるべく、定期的なイベント開催なども検討しています。(了)
※画像2点は劇場イメージ
(インタビュー/文・構成:松本貴則)