『マラヴィータ』小口心平・宣伝プロデューサー
2013年11月05日
オピニオンリーダーで期待感をさらに高める
――オピニオンリーダーというのは?
小口 今回、露出を得たいがためだけに誰彼構わずタレントを起用することはしたくない。作品の持つ大作感、期待感をさらに押し広げてくれるような著名人に宣伝をサポートしてもらいたい。宣伝プロデューサーの立場として、そういうスタンスでした。
そこで、北大路欣也さんにTVスポットのナレーションを務めてもらうことになりました。北大路さんはデ・ニーロと同じ70歳。某TVCMの影響もあり「日本を代表するお父さん」のイメージが定着しています。直近では大ヒットドラマ「半沢直樹」でも印象的な役柄を演じていました。日米の大物2人を掛け合わせることで映画の持つ風格を高め、ホンモノを志向する40代以上にアピールしました。
また新聞広告では、幅広い層に支持されている、関根勤さんにも稼働していただく予定です。
――デ・ニーロのジャパンプレミアでは、猪瀬直樹東京都知事がゲスト登壇を予定していました。
小口 猪瀬都知事も北大路欣也さんと同様、オピニオンリーダーの1人としてブッキングし、大物2人が並び立つことで作品への期待感を膨らませようとしました。都知事はあいにく伊豆大島での台風26号の被害に対応するため急遽欠席となりましたが、我々配給サイドの意図するところは広く伝わったと思います。
――TVスポットでは、どのような戦略を敷いていますか。
小口 15秒のスポットで、公開直前の11月9日から、日本テレビ、テレビ朝日、テレビ東京の3局に集中して大量投下します。日本テレビでは主に平日のニュース番組や情報番組に投下し、メインの40代以上に訴求する狙いです。テレビ朝日では夜のバラエティ番組でスポットを打ち、若年層、ライト層にアピールします。
――テレビ東京で面白い企画を計画しているようですね。
小口 ええ。スポット投下に合わせて「『マラヴィータ』公開記念 テレビ東京 ロバート・デ・ニーロ特集スペシャウィーク!」と銘打ち、デ・ニーロ出演3作品を連続放送します。まず「午後のロードショー」枠で11月12日に『ボーダー』、翌13日に『15ミニッツ』の2作品。さらに極めつけで、11月16日の深夜枠「サタ☆シネ」で劇中にも登場する『グッドフェローズ』を放送します。映画公開とテレビ放送をここまで密接に絡めるのは珍しいケースで、相乗効果が期待できます。
若年層、ライト層の取り込みも
――10月にデ・ニーロの来日、公開直前の11月に北大路さんのTVスポットと続けて、大型の露出展開で公開まで駆け抜けるということですね。一方でライト層、若年層に向けた施策としては、何がありますか。
小口 1つは、予告編のナレーションに「人志松本のすべらない話」のナレーターとして知られる声優の若本規夫さんを起用し、映画の持つユーモアの部分を強調して伝えていきました。
また、デ・ニーロの娘を演じるディアナ・アグロンはTVドラマ「glee/グリー」で大ブレイクした若手女優で、日本でも10代、20代の女性に人気がありますから、彼女の出演は訴求の好材料になります。20世紀フォックス ホームエンタテインメントさんと共同出稿して、シネマトゥデイでディアナ・アグロン「glee/グリー」×『マラヴィータ』特集ページを展開しています。
――この他にも、WEB展開に力を入れていますね。
小口 各サイトで特集やバナー展開をしています。またフェイスブック、ツイッターなどSNSで動画や写真が多く拡散されるよう公式HPを含めて展開を組み立てました。具体的には、映画.comでTOP背景ジャックと特集展開、Yahoo!映画でプライムディスプレイ ダブルサイズ エキスパンドスクリーン。他にADジャスト(動画広告)、GDN広告、SNS広告等です。
――ポスターやチラシのビジュアルは、どんな狙いを込めましたか。
小口 キーカラーである赤と白をベースに、一家4人(父、母、娘、息子)の姿を収めました。メインビジュアルにトミー・リー・ジョーンズは使用不可という条件がありました。日本で彼の知名度は抜群ですから残念ではありましたが、逆に良い面もありました。一家4人が揃うビジュアルを使用することで「ファミリー」というキーワードの1つを強調することができました。メインビジュアルに「この“ファミリー”に要注意。」「まるでマフィアのような家族(ファミリー)が、本物のマフィアに立ち向かう!」といったコピーを合わせることで、ワケありだぞ、ウラがあるぞ…というユーモラスな部分を盛り込みました。
興収4億円に向けた大きなチャレンジ
――タイトルの『マラヴィータ』にはどんな意味があるのですか。
小口 そもそもはイタリア語で、マフィアや裏社会を意味する言葉です。一家の飼い犬の名前がマラヴィータといい、この犬がまた曲者なのです。実は全米公開時のタイトルは『THE FAMILY』で、日本でも『ザ・ファミリー』というタイトルを検討しましたが、ベッソンの判断で米国以外は全世界共通で原題どおり『マラヴィータ』と決まった経緯があります。タイトルでは伝わりにくい映画の中身を、ビジュアルやコピーを工夫することで打ち出せたと思います。
――トニーノ・ブナキスタ著の原作が、文春文庫から出ています。
小口 原作本は「隣りのマフィア」というタイトルで06年1月に刊行されていましたが、映画の公開に合わせてタイトルを「マラヴィータ」に変えて、カバーも映画仕様に新装し再発売しました。文藝春秋さんはプロモーションに積極的で、映画の予告編映像を流すなど書店での展開が充実しています。
――さて、どのくらいの興収を目指しますか。
小口 全国130~140スクリーン規模のブッキングで、興収4億円を目指します。共同出資会社はハピネットさんです。『ミスト』(08年5月公開)に匹敵する当社最大規模での公開となり、TOHOシネマズ有楽座というチェーンもかつてない大きなチャレンジとなります。宣伝は当初の予定どおりに進行し、手応えもあります。ぜひ期待していただきたいですね。(了)
(インタビュー/文・構成:松本貴則)
(C)EUROPACORP- TF1 FILMS PRODUCTION – GRIVE PRODUCTIONS
Photo:Jessica Forde