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●「プロデューサーミーティング:国際共同製作シミュレーション」
国際共同製作による新しい映画作りの枠組みとは―
同日午後には、ユニジャパンエンタテインメントフォーラム@香港「プロデューサーミーティング:国際共同製作シミュレーション」(主催:経済産業省+ユニジャパン)が開催され、冒頭、ユニジャパンの
高井英幸理事長(写真左)が「日本では製作が活発に行われている。日本の国際共同製作支援プログラムを活用して頂き、活気あるものにして欲しい」と挨拶。
西村隆事務局長(写真右下)が日本の国際共同製作支援事業について説明し、積極的な国際共同製作を呼び掛けた。
パネリストとして、
野地千秋氏(松竹)、
ピート・ライブ氏(フィルム・オークランド)、
アラン・ルー氏(深土川市世紀領軍影業投資有限会社/中国)、
エスター・コー氏(豊盛華藝電影有限公司/香港)、
アディタ・アサラット氏(ポップピクチャーズ/タイ)のアジア各国プロデューサーが登壇。プレゼンターを
片原朋子氏(J&Kエンタテインエメント)、モデレーターを
富山省吾氏(日本アカデミー賞協会)が務めた。
昨年に続く今回の本フォーラム@香港では、オセアニアのニュージーランド(NZ)、中国語圏として中国と香港、東南アジアのタイ、そして日本というアジア太平洋地域における4つのエリアのプロデューサーが結集し、共同製作のメリットを最大限生かした製作の合作シミュレーションが試みられた。
片原氏(写真左)が登壇し、昨年のテーマはアジア版「プリティウーマン」だったが、今回のテーマはアジア版3D「三銃士」で、普遍的な物語を取り上げることで、キャスティング、ロケーション撮影、スタジオでの特殊撮影、ポスプロなどについて提案し、合作の実現を目標としてパネルディスカッションが行われた。
今回は予算規模が日本円で約15億円、予算の内訳と各国の負担額、ロケ地を中国で80%、ニュージーランドで20%、キャストの国籍、スタッフ、収益の配分方法などと、より具体的な提案が下記の通りなされた。
■国際共同製作シミュレーション企画 アジア版3D「三銃士」
Ⅰ.作品ジャンル:3D映画/SF/時代劇/冒険アクション
Ⅱ.撮影方法:①ロケーション撮影、②スタジオでの特殊撮影
Ⅲ.ポスプロ
Ⅳ.予算規模:総予算US18,500,000ドル(日本円約15億円)
①予算の内訳:プロダクション費(Above、below合算)=US13,500,000ドル
ポスプロ費 =US5,000,000ドル
②各国の負担額
中国・香港=US8,200,000ドル(44.2%)
NZ =US3,500,000ドル(19.0%)
タイ =US1,200,000ドル(6.5%)
日本 =US5,600,000ドル(30.3%)
Ⅴ.キャストの国籍:クレジットの並び順に表記
1.若者(原作ではダルタニヤン‐賢く元気な若い剣士) 男 中国・香港1
2.三銃士1(原作ではアトス‐冷静なリーダー格) 男 日本1
3.三銃士2(原作ではポルトス‐巨漢でコミカル) 男 NZ1
4.三銃士3(原作ではアラミス‐洗練された優美な剣士)男 タイ1
5.恋人(原作ではボナシュー夫人‐若者の想い人) 女 中国・香港2
6.敵1(原作では枢機卿‐常に4人の敵となる策謀家) 男 日本2
7.敵2(敵1側の剣士、何度となく4人と戦う) 男 NZ2
8.庇護者(原作では銃士隊長‐4人の味方) 男 タイ2
9.王妃(4人の剣士の冒険の発端となる人物) 女 中国・香港3
Ⅵ.スタッフ:監督、撮影、アクション監督、美術、音楽、視覚効果
Ⅶ.収益の配分に関して:各々のベースになるテリトリー
中国・香港=中国大陸、香港、台湾
NZ =NZ、オーストラリア
タイ =タイ、インドネシア、マレーシア
日本 =日本
その他 =出資比率に応じて分配
富山氏(写真右)がアジアパシフィック地域で共同製作する意味を問うと。
中国の
アラン氏(写真左)は、「中国市場の成長は早く、3D映画は非常に大きな発展を収めている。いくつかの基準は満たさなければいけないが、この『三銃士』のプロジェクトを見て、共同製作できる、マーケットに合うものだと思う」
香港の
エスター氏(写真右)は、「香港は中国と比較してマーケットが小さく、ハリウッド映画に依存している。3D映画は主流になりつつあるが、映画の中身も重要で、中国映画は世界へどう出ていくのか、前向きな内容でなければならない。ただ、中国マーケットは大きいので、香港としても協力出来るのではないか」
ニュージーランドの
ピート氏(写真左)は、「今回の企画はチャレンジだと思うが、この予算ならば実行可能だ。もっと予算を増やしてもいい。グローバル化、世界市場全体を狙って、世界各地から優秀なスタッフを募集する。ただ、ニュージーランドとしては、資金が最大の課題だ」
タイの
アサラット氏(写真右)は、「タイでは沢山の問題が生じている。120万ドルは我々にとって非常に大きい。我々は政府からもらっている資金はない。独立製作者としては、どのように参加していくのかが、直面している問題だ」
そして、日本の
野地氏(写真左下)は、「日本の実写映画には3D映画が少ない。中国と違って、製作費もどんどん下がってきている。560万ドルは高い金額だ。ただ、若い男性キャストで、イケメンが沢山出て来て、カッコイイ男たちがアクションするならば、ぴったりな企画ではないか」とした。
それを受けて
富山氏は、「製作費のサイズの問題。日本では3D映画は厳しいと思うが、中国では可能性があるだろう。製作費はアランが何とかしてくれると思う(笑)。中国を中心とした撮影が望ましいが、タイのロケーションの魅力を教えて欲しい」
アサラット氏は「資金調達では困難なところがあるが、タイには素晴らしい自然がある。これは約束できるし、ポスプロ環境も素晴らしい」と答え、富山氏は「タイの多様性を考えることは大切な要素だ」と分析。
そして、
ピート氏は「ニュージーランド政府のインセンティブには、製作支援資金がある。最高で5000万NZドル。アメリカドルに換算すると非常に大きい。プロジェクトを中国と共同でやっているかが重要だ」と実現の可能性を述べた。
各国間でクリアしなければならない問題はもちろん数多くあるが、出席したプロデューサーたちからは概ね好意的な意見が寄せられた。時間の都合上、このミーティングで意見をぶつけ合うような場とはならなかったが、
富山氏は「このユニットでの実現の可能性が見えたと思う。国際共同製作による新しい映画作りの枠組みを作っていきたい」と締め括った。