ワイドで多彩な作品を編成することが出来た
★島谷能成・東宝社長
昨年5月に高井(英幸・現相談役)からバトンタッチされ、今日が初めてで慣れないところがありますが、宜しくお願い申し上げます。
我々の会社の製作・配給・興行、それぞれの部門の昨年の総括と今年の展望を簡潔に申し上げたいと思います。2011年、配給部門の総興収は591億1千万円強となりました。前年比77・6%。この数字は、8年連続で年間興収500億円を超える記録。ただ、前年の2010年は映画界にとっても我々にとってもビンテージ・イヤーというか素晴らしい1年で、10年の我々の興収は748億7千万円強で歴代1位になりました。歴代1位が前年にありますので、77・6%これまたやむを得ないかなと思っております。
30本配給し、興収40億円を超える作品が4本、30億円台の作品が3本、20億円台の作品が4本、10億円台の作品が12本といった非常に手堅い成績を残すことが出来ました。興収の1位は「コクリコ坂から」の44・6億円、2位は「ポケモン」の43・3億円、3位は「ステキな金縛り」の42億円、もう一本の40億円超えは「SPACE BATTLESHIP ヤマト」でした。50億円を超える作品はありませんでしたが、どの作品も製作会社が作り出した高いクオリティの作品を編成することができ、それぞれの作品と東宝の配給・宣伝の力が一つになり、こういう数字を達成できたと思っております。全体を通して、観客は新鮮な企画、旬な企画を求めているんだと強く認識した一年でした。
実写第1位となった「ステキな金縛り」や22億円をあげた「モテキ」のヒットは、こういう時代にはコメディが受けるのだなという分析を頂いていますが、同じジャンルの作品ばかりではすぐにお客様に飽きられてしまいますので、やはりバラエティに富んだ、多彩な作品を揃えていくことが、重要なんだということも同じく強く思わされた一年でした。
創立80周年を迎える記念の年 さて、今年は我々創立80周年を迎える記念の年になりました。今年のラインナップは既に発表させて頂いておりますのでご承知かと思いますが、いろんなジャンルが揃って、内容、それから観て頂きたい客層共にワイドな、多彩な作品を編成することが出来ました。いま公開中の「ALWAYS 三丁目の夕日’64」は、期待に違わない出だしで目標の興収45億円超えを目指して驀進中。お客さんの満足度も非常に高いと聞いておりますので期待しています。
それから夏から秋にかけて、「踊る大捜査線 THE FINAL」、「BRAVE HEARTS 海猿」、それから高倉健さん主演の「あなたへ」等の実写大作から「ドラえもん」、「ポケモン」といったお馴染みのシリーズものに加えて、夏休みに「サマーウォーズ」の細田守監督の新作、オリジナルです、「おおかみこどもの雨と雪」を加えたアニメーション作品も揃っております。全部で前年を上回る34本を配給する予定であります。34本、1か月にだいたい3本くらい新作を発表し続けるということなので、これまた我々大きなチャレンジだと思っております。どの作品もエンタテインメント性溢れる作品で、話題性もあると自負しております。
また、各社さん、各メディアさんが集まっての製作委員会方式と言うんでしょうか、提携作品と言いましょうか、その映画作りも相変わらず活発です。シリーズもののアニメ作品も長期化に向けて、知恵を絞った展開をしております。我々の自社製作作品も数が増えてまいりました。今年も昨年に続いて、手堅さに新鮮味を加えながら、着実な1年にしていきたいと思っております。
全体的にレベルが上がってきた それから我々の製作部門の稼働ですけども、昨年の自社製作作品は「モテキ」が22億円、「神様のカルテ」が18・9億円、「岳 ガク」が16・3億円と着実にヒットに結び付けられました。「星守る犬」は9・2億円ということでしたけども、全体的にはレベルが上がってまいりました。我々の企画、あるいは製作に携わるプロデューサー、あるいはプランナーの若手のレベルが、実力があがって来たんじゃないかなと考えています。このままの調子でどんどん大きく花を咲かせてもらいたいなと思っております。
今年の我々の幹事作品は6本。お正月公開の「friends もののけ島のナキ」は3DCGのアニメです。現在公開中ですけども、出だしはちょっと寂しい出だしだったんですけども、だんだん口コミでお客様を呼びまして、作品が評価されて、正月の三が日では非常に大きな、我々の正月作品では一番大きな稼働を見せてくれました。「ALWAYS」の山崎貴監督なんですけども、こういうCGアニメ、日本ならではのCGアニメはこれからも作っていきたいと思っております。
それから「日本列島 いきものたちの物語」、これはドキュメンタリーです。NHKさんとご一緒しております。それからベストセラーコミックの「僕等がいた」、これは前編と後編2本作りまして、連続で公開するという新しい試みに挑戦します。同じく人気コミックの「宇宙兄弟」、これは宇宙を題材にした兄弟が子供のころ約束した宇宙飛行士への夢を叶えるために懸命に努力する話です。それから高倉健さん主演の「あなたへ」、この6作品です。ライブもの実写ものに関しては東宝映画が制作を担当しまして、改造計画も済ませた東宝スタジオで、いずれも作品が制作されております。
3Dに向いた企画があった場合に3D版を選択 それから最後に3D作品に対しての我々の考え方とか今の取り組みをご報告します。3Dの配給に関しては現在、「もののけ島のナキ」と「イナズマイレブン」、「ALWAYS」の3本を配給、公開しております。以後の作品で現在決定しているものはありません。今後も作品の特性に合った場合は、3D版の公開はあると思いますけども、ハリウッドのように多くの作品で3D版が製作されることは、少ないんじゃないかなと考えています。そもそも日本映画はどちらかというと、スペクタクルというよりは人間ドラマでお客様の支持を得ているというところもありますので、3D向きの企画を探すのではなくて、向いた企画があった場合に、3D版を選択していこうという風に考えております。
それから興行部門について、我々の興行部はTOHOシネマズという会社に一本化されております。TOHOシネマズの2011年の興行成績、現在直営と共同経営館を含んで62サイト、568スクリーンです。共同経営館は映連3社でご一緒させて頂いております、札幌シネマフロンティア、大阪ステーションシティシネマ、それから東映さんとご一緒させて頂いております、新宿と大阪のバルト、OS興行と西宮OSのこの5サイトですね。これを含めて62サイトです。
昨年の動員は3305万人、興収は429億円、前年比で興81・0%でした。この中にはODSで10億2000万円、全体の2・4%ですけども含まれております。それから昨年の我々の増・閉館ですけども、4サイト新しく増え、2サイトが減りました。都合プラス2サイトです。スクリーン数では行って来いで23スクリーン増えました。
デジタル映写機は直営館の99%に設置済み
それからデジタル映写機の設置状況は、昨年の年末時点で直営568スクリーン中、約562スクリーン、99%に設置が済んでおります。未設置の6スクリーンは、「午前10時の映画祭」で洋画の傑作をフィルムのニュープリントでお客様に観て頂こうということをやっておりますが、その対応ということで残っております。
今年の増館の予定は、既に1月21日にTOHOシネマズ天神をリニューアルしまして、近郊ありましたソラリアシネマという西鉄さんが経営されている映画館ですけども、その3スクリーンをTOHOシネマズの一体経営ということで増館しました。今後決まっているのは、既に発表済みですけども、2014年3月にTOHOシネマズ日本橋、9スクリーン、約1800席の予定。2015年5月、TOHOシネマズ新宿、新宿コマの跡地です。いずれも名称は仮称です。新宿は12スクリーン、約2500席の予定です。
それから昨年の3月11日に大震災がありまして、復興まだまだというところで、我々としてもこの仕事を通じて、被災された皆様に楽しい娯楽をお届けしたいという風に思っております。この震災で、TOHOシネマズ62サイト中、25サイト、40%の劇場がなんらかの影響を受けました。その中には、劇場が多少棄損されたところもありますし、計画停電その他で平常の営業が出来なかったサイトもありました。一番最後までオープンできなかったのは、TOHOシネマズひたちなかとTOHOシネマズ横浜の2サイトで、5月20日にオープンするまでは全く運営できませんでした。というのが震災の影響でございました。データ的にはそのようなことでございます。(了)
※岡田裕介・東映社長の挨拶は次のページへ