皮肉にも大災害にあうことで、政治的・経済的に対立していても世界中から救援が駆け付け、支援物資が届き、世界とのつながりを実感、「地震後、ニュージーランドのクライストチャーチの地を離れる人は少なく、逆に犯罪率が低下している」とスー氏。映画制作者に何が出来るのかを考え、簡易シャワー室を設置するなど、すぐにアクションを起こし、「私たちは映画制作におけるあらゆる事態に対応できるように、いつも軍事訓練を受けているようなもの。手を差し伸べることが第一歩で、他人に対して温かい心を持つことが重要だ」とした。
レヴィ氏はドキュメンタリー製作の動機を被災者から「映画制作者の観点から撮影して欲しい」と提案されたからだと言う。「どんなに大災害が起きても人々はすぐに忘れてしまう。3日間何も食べられない状況であっても、他の人ために、高齢にもかかわらず団結して自分たちが立ちあがって力を発揮する被災者、日本国民に感動した。カメラを回すことにはじめは抵抗があったが、映画制作者の責任として、ニュース映像のように取材をするのではなく、何か一緒にするべきだと思った」と述べた。
一方でフー氏は、「唐山大地震」製作中に四川大地震が起こり、映画製作続行への疑問に苛まれながらも完成させ、公開にこぎ着けた。「完成しても公開できないと思ったこともあったが、当時の地震の惨状を見せるのではなく、一つの家族が再会し、心が一つとなり、幸せに生きていく姿に希望のメッセージを込めることに我々は目的を定めた」と言う。そして、「唐山市も支援してくれ、試写会をやった結果、当時被災した人たちも感動してくれて、全国公開できた」と明かす。同作は、日本では4月に上映される予定だったが公開が延期。津波のシーンがある「ヒア アフター」も震災直後に上映中止となった。大災害にあった時、我々はどう考えればいいのか。
寺脇氏は、「文化をストップさせることは返って復興にとって良くないのではないか」とし、文化の自粛について問いかけると、神山監督は「自粛ムードが過剰に出て、花火大会などもずいぶん自粛された。自粛する気分は世の中を歪めていく。戦争の時もそうだった。ドラマを作る者からすると、小学生たちが津波によって亡くなった悲痛な出来事などを、映画にしたいと思ってしまう。不謹慎と言われる部分もあるかもしれないが、ドラマとして残していくべきではないか」と、作家としての正直な個人的考えを述べた。それを受け寺脇氏は、映画の無料上映会なども例に挙げ、「本来、日本の花見や花火という文化は、亡くなった人のことを思うこと、無常の文化。経済的にも大打撃を受けたかもしれないが、文化的に考える、人間同士の絆を考える機会を与えられたとも言える。選択の余地を持つことも文化の力だと思う」と締め括った。
なお、続く映像政策者会議(非公開)には、12カ国の映像政策責任者、ASEAN局長、AFCNet会長、AFCNet諮問委員2人(マイケル・レイク、ウィリアム・ボウリング)が出席。アジア交流協力に関するコンセンサスを得たことで、アジア国家の映画映像における協力の現状と変化の動向を読み取り、地域協力という枠内で映画映像交流を促進し、拡大させるための政策と支援制度の拡大方案について、さらにASEAN、APEC(アジア太平洋経済協力会議)のような地域協力体との連帯の必要性と共助方案について話し合われた。
ASEAN初参加の意味とは
●「2011アジア映像政策フォーラム」共同宣言文
▼アジア各国及び地域は、様々な文化を元に地域固有の映像文化及び産業を発展させて来ている。また、映像産業を通じた国家及び地域の間の交流を増加させることにより、映像産業が及ぶ文化的、社会的、経済的な価値と重要性に関する認識はもっと強化されている。
▼アジア11ヵ国の映像政策責任者は、アジア地域の映像産業の発展と交流のため共同の方向を模索し、アジア各国の映像産業と関連した様々な経験と情報を公有しようと『地域協力』という主題で2011 アジア映像政策フォーラムで4日間話し合った。
▼東南アジア諸国連合であるASEANの参加により、ASEAN国家及びアジア各地域の間の協力と連帯に関する共感が一層強化されて、相互互恵的な映像政策の樹立と政策的な交流のため共同の努力を尽くすことに同義した。
▼アジアの便利な映画制作環境を造成するため、アジア各国及び地域の間の映像作品撮影及び制作交流を支援し、アジア地域のフィルムコミッションの活性化とフィルムコミッション設立を積極拡大しようとする。
▼アジア地域の映画撮影誘致と制作活性化を目標に、ASEAN国家及びアジア映像産業の共同マーケティングと広報を拡大し、これのため実質的で常時的な活動と支援政策を強化する必要がある。
▼アジア地域の映像産業の均等発展及び成長のため、ASEANとの協力体制を強化し、アジア国家及び地域の間の映画映像政策及び産業情報交流を拡大し、知識共有の活性化を積極支援することを促す。
(つづく)