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アスミック・エース エンタテインメント、豊島雅郎社長に聞く!

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アスミック・エース エンタテインメント、豊島雅郎社長に聞く!

2011年07月22日

劇場と配給側がコミュニティを一緒に作っていく

 
―今後、洋画の展開についてはどのように考えられていますか。

豊島
 洋画についても基本この1、2年は、いいものがあればというスタンスでやってきているんですけど、今年5月のカンヌ映画祭の報告を受けても、各社さんまた積極的に買われたらしいので、そうするとまた一回下がったMG(ミニマム・ギャランティー)が多少あがってきてしまうかなという懸念はあります。

「スパイキッズ4D」.jpg ですが、どちらかというと手離れがいいというか、「スパイキッズ4D~」のように、買い付けてから4,5カ月で公開できるのは魅力ですね。それは冒頭に申し上げた、邦画の場合にはどうしても1年半くらいのスパンで企画から公開までかかるのとは逆に、洋画は違ったダイナミズムがあります。早く事業展開できるという意味では、洋画というのも今の時代にはあった面白い商材なのかなと、この時代の速度が速い中ではありなのかなと。

 ただ、若い方の映画離れはかなり感じるので、そういう若い方に向けて、洋画離れしている人たちに向けてどうしていくか、本当に取り組まなければいけない。個人的には、昔ながらのやり方を変えて、例えばお客様を待つというスタイルではなく、劇場と配給側がコミュニティを一緒に作っていく。渋谷のAという劇場が10万人くらいの会員組織を作って、Aという劇場は今度こういう作品やりますというのを10万人には確実にアナウンスして、その人たちに来ていただくような、今までと違う仕組みを作っていく。今の世の中、早くて、情報が氾濫しているからこそ、小さい映画の情報を確実に届けることが難しくなってしまっています。そういう作品を見るのが好きだ、という可能性がある人たちのコミュニティを作って、今まで以上に確実に足を運んでもらえるようなやり方を考えていかないといけないのではないでしょうか。

(C)SPY KIDS 4 SPV,LLC / 9月17日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー


 ―改めて、邦画製作は今後も積極的に手掛けていくと。

豊島
 100万人、10億円以上というものを中心にやっていきたいなと。逆説的には、そういった企画を作り上げることができれば、松竹さんや東宝さんとご一緒したり、今度は東映さんともご一緒させて頂く予定もあり、大型の作品であれば、大手ともご一緒できるようになるかなと思っています。さらに、地上波のキー局さんも参加したいと言って頂ける確率も上がるのではないでしょうか。各社様に興味を持ってもらうことが指針になるというようなことも、うちのプロデューサー陣に言っています。

 それから先ほども言ったように、お客様の顔が見える企画は続けていくつもりです。でも、本当にお客様の顔が見えているのか、そこは吟味してやっていかないといけません。今年、興収3~5億円という成績を狙ったものが、みんな2億円届かずに終わってしまうというような結果になったことは、配給会社としてパートナーさんには力不足で申し訳ないという気持ちがあります。マーケットが、公開1週目の成績がそこそこだと、どうしても閉じられてしまうというのが以前に比べても早くなりました。それが現実なので、そこはちょっと我々としても、それを踏まえた戦略をやっていかないといけないですね。

豊島社長③.JPG それから我々としては、映画だけでなく、TVドラマをお手伝いさせて頂いて、映画化を目論んでいきたいですね。全国ネットのTVドラマなどを見ていると、facebookやツイッターといったところでの話題の盛り上がり、共鳴感というのが、日本中で面白いとか即時に共鳴する様が凄い。それが噂になって映画化されるかもとすぐに広まったりして、その辺を宣伝の一つとし、TVでユニークなドラマを作って、それを映画化するのは、よりビジネスとしてありなのかなと思います。今までのTV局さんとは違った、我々映画サイドからのドラマ制作というのはあるのではないでしょうか。

 TVドラマについては、その後のホームエンタテインメント・ユース、その他2次利用、配信など、特にアメリカの場合は全世界に向けて作っており、予算も映画並みにかけてやっているので、見応えがあるのが当たり前ですが、連続ものというのが配信プラットホームにおいては、かなり楽しんでもらえているみたいですね。日本においても映画の90分、120分、150分で終わりというフォーマットでなく、60分×12話とか、24話とか、そういうフォーマットを魅力的な見せ方でボリューム感も出せます。配信マーケットにおいても優位性をもっていますね。そういう意味で我々もドラマ制作というものに、かかわっていきたいということです。もちろん外部の会社さんが作ったものを調達したり、プロデューサーという立ち位置で、いろんな事業をやっていくことを推し進めていき、映画、ドラマと言いましたが、それ以外のCM制作、PV制作なども、これからどんどんやっていきたいと思っています。


ODS専門の新機能開発本部を始動

 
―いま広がりを見せているODS(非映画コンテンツ)の展開については。

豊島
 6月に、KARAのライヴビューイングをやらせてもらったり、うちも専門の部隊(新機能開発本部)を作りやり始めたら、今までお付き合いできなかったような会社さんとも、新しいネットワークが出来てきました。特にうちの場合はグループのシナジーとして、UCで上映して、J:COMでビデオ・オン・デマンドもできますというのも売りにしています。

 そういう優位性で、コンテンツホルダーさんも興味を持って下さるところはあると実感しているので、今後も推し進めていくのは間違いありません。早くもアミューズさんは芸能事務所としての優位性というのを生かし、4社でODS事業会社「ライヴ・ビューイング・ジャパン」を立ちあげられました。我々は配給・劇場・ケーブルという強みを生かして、コンテンツの確保ができたらと思います。シネコンさんから聞く限りは、座席稼働率は12%とかそれくらいなんですよね。残りの88%が空席で運営しているというのが、現在のシネコンの現実なので、少しでも稼働率をあげていくことが劇場の大命題になっており、現在のシネコンの現実を踏まえ、その稼働率、単価をあげていけるように配給会社としても、新たなコンテンツを供給していければと思っています。


 ―DVD、ブルーレイといったパッケージ事業の方はいかがでしょう。

豊島
 下げ止まったかなと思っています。どちらかというと、コレクターアイテムとして手元に持っておきたい、映像(本編)は見なくても買いたいとか、本編よりも特典映像のために買いたいとかいうマニア、コアなユーザー向けなものであれば、まだモノとして売れるというのは感じています。レンタルにおいても下げ止まった感がありますね。ただ、今年5月に韓流・アジアものがTSUTAYA史上初めて洋画を抜いてしまったという売上構成比は変わっていますけど、そこは我々の目利きをしっかりやっていけば、まだパッケージもありなのかなと思っています。

 本編については、ノンパッケージでもいいという傾向になってしまっているようです。レンタルはやはり“見逃し”としてのニーズはあると思いますが、セルにおいて本編そのものは残念ながら魅力薄になってくるだろうと思います。モノとしての魅力をもっと打ち出さないとダメでしょうね。


 ―最後に、これからのデジタル時代にどう対応していくのかが、今後コンテンツ系会社の経営者にとって問われてくると思いますが。

豊島
 とにかくスピードが大事になるでしょうね。劇場もデジタル、家庭環境もデジタルになったら、企画して世の中に問うまでの時間を短縮できる時代、仕組みになっているので。そうしていくと早い判断とか、会社ですとある程度の資本ですとか、それも大事になってくるでしょう。その先には会社の資金調達力とか信用力とか、そういったものも重要になってくるわけです。

 組織ももう少しスリム化していきたい。今までなかった新機能開発本部を長澤(修一・本部長)部隊でやっていくために人もそこへ集めて、今までのビジネスは既存の三分の二くらいの陣容で、三分の一は今までやっていなかったことをやっていく。これは社員にも言っています。そうすると組織もスリム化せざるを得ない。そこはもうシフトし始めていて、そこも新しいお客様のハブになれればと思っています。

 組織的には骨格は決めたので、あとはスタッフがどう動いていくかというところです。その上で、映画・映像の事業プロデュースをする集団に特化していきます。既存のディストリビューション(映画・映像事業本部)は磯野(進・本部長)部隊で行います。海外セールス・邦画版権管理は、これまで製作部門(企画・製作事業本部)の中に入れていましたが、その部分も今後は磯野部隊に集約することで、企画・製作事業本部の遊佐(和彦・本部長)部隊はより製作に特化していきます。新機能開発をいかに強くしていくかが、当社の課題ですね。(了)


豊島社長②.JPGプロフィール

豊島雅郎(てしま・まさお)


 1963年生まれ、千葉県出身。86年、新卒一期生としてアスミック(現アスミック・エース エンタテインメント)に入社。06年より代表取締役社長に就任。主な洋画担当作品にダニー・ボイル監督作『トレインスポッティング』(96)、テリー・ツワイゴフ監督作『ゴーストワールド』(01)等。
 主な製作作品に曽利文彦監督作『ピンポン』(02)、金子文紀監督作『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』(03)、宮藤官九郎監督作『真夜中の弥次さん喜多さん』(05)、森田芳光監督作『間宮兄弟』(06)、高田雅博監督作『ハチミツとクローバー』(06)、蜷川実花監督作『さくらん』(07)、長崎俊一監督作『西の魔女が死んだ』(08)、英勉監督作『ハンサム★スーツ』(08)森淳一監督作『重力ピエロ』(09)、三木孝浩監督作『ソラニン』(10)、金子文紀監督作『大奥』(10)、森田芳光監督作『武士の家計簿』(10)、トラン・アン・ユン監督作『ノルウェイの森』(10)等がある。



アスミック・エース エンタテインメント会社概要はこちら



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