◎いまだ光明が見えない今年の映画興行に思う
今年の映画興行に、なかなか光明が見えない。昨年の年間興収最高成績の余韻など、どこにもない。いずれ、ヒット作がどさっと出るよという楽観組も相変わらずいるだろうが、事態はそんな甘っちょろいものではない。
たとえば、TOHOシネマズの2月の興行成績は、直営館545スクリーンで入場人員が228万1757人・興収が28億万8670万3876円だった。昨年の2月対比では、前者が78・3%、後者が75・6%。これだけ見れば、赤字の分水嶺に入っていると推測できる。もちろん、他の劇場もこれよりいいということは少ない。
いくつか、理由が考えられる。まず一つ。洋画の低迷が、続いていること。この1、2月に公開された洋画で、興収20億円を超えた作品は1本もなかった。「ソーシャル・ネットワーク」は超えてくるとみられたが、15億円前後で落ち着きそう。あとは、そこそこの成績を上げた作品でも、10億円台がやっとといったところである。
興行の落ち込みが、激しくなっていること。これは、スタートでまずまずの出足を見せたにもかかわらず、2週目、3週目あたりの動員の落ち込みが大きいことを示す。「太平洋の奇跡」は、スタートでは最終20億円突破は簡単だと思われたが、2週目、3週目に至り、その数字を超えるのは容易ではなくなっている。「ヒア アフター」も、最終10億円はあっさりと超えると思われたが、これもそれほど簡単なことではなくなった。
番組編成の問題もある。配給会社主導で作品公開が組まれているため、全体の編成バランスを欠いていることが多くなった。同傾向の作品が並ぶケースがあり、観客側の選択肢がかなり減っている。
常に安定感を築いてきた東宝配給作品の興行に、少し陰りが出てきた。この1、2月の公開作品を見る限りにおいては、だいたい10~20%ほど目標値を下回っている作品が多いようにみえる。テレビ局主導の作品宣伝のあり方、中身など、個別作品的には様々な問題がある。
それぞれ、より深い検証が必要であろうが、低迷の背景にあるのは、もちろん今挙げた理由だけではない。では、また成り行き的に、ヒット作品が登場するのを待つしかないのか。否、である。それでは、もはやダメなところまで来た、というのが私の考えである。
(大高宏雄)