◎「SP」「GANTZ」、さてどちらに軍配が
映画界は、早くも春興行に突入しつつある。その前段階として、ちょっと驚くような公開が始まった。2月26日から、何と「SP 野望篇」の“復習上映”が開始されたのである。公開館数は、300スクリーンを超えた。新作並みのこのブッキング数にも、驚かざるをえなかった。これは当然ながら、3月12日から公開される「SP 革命篇」の成功へ向けた配給側の一手である。
“復習上映”というこの名称は、配給の東宝が考え出した。最初に行ったのが、「20世紀少年」の1作目。つまり、単純な再上映ではなく、パート2、及び続編の公開間際、前作のおさらい的な上映を行う意図のもと、“復習上映”と名付けたのである。「20世紀少年」に続いては、「のだめカンタービレ」で行われた。
この“復習上映”は、入場料金は1000円均一。パート2、続編の前売り券購入者は、それを提示すれば500円で見られる。当然の価格だろう。興行の大きな成果は難しいと思えるが、観客サイドの“復習”はもちろんのこと、宣伝的な側面の意味合いもかなり大きいと見える。ただ、作品がたださえ多いこの時期、劇場側には様々な意見があるだろうが。
これに関連して、1月29日から公開され、この2月27日までで全国動員226万7753人・興収28億4006万9850円を記録した「GANTZ」は、この“復習上映”が行われないことが明らかになった。
続編との公開間隔が短いということが一番の原因だが、実はこの「GANTZ」、続編である「GANTZ PERFECT ANSWER」の公開初日である4月23日の前日まで、延々と上映が続けられることになったのである。1月29日初日だから、何と12週間上映。これが前々回、「~ヤマト」の項でも述べた今の東宝の営業の力であろうか。
このように、フジテレビメイン製作の「SP」と日本テレビメイン製作の「GANTZ」は、配給、興行面でのあまり見えない部分で、しのぎを削り合っているのである。後者は、高額な製作費、俳優陣のことを考慮すれば、「SP 野望篇」(最終36億円)に負けるわけにはいかないだろう。前者もまた、計り知れない意地がある。さて、どちらに軍配が上がるのか。
(大高宏雄)