◎「~ヤマト」が興収40億円台に乗った理由とは
キムタク主演の「SPACE BATTLESHIP ヤマト」が、ついに興収40億円を超えた。この3週間ほど、39億円台で推移していたが、やっとのこと大台に乗ったと言えよう。2月13日現在では、動員330万4989人・興収40億2354万2490円を記録した。
「この3週間ほど、39億円台で推移していた」という点に注目してもらいたい。「~ヤマト」は、昨年の12月1日公開。この2月中旬の現在も82スクリーンで公開されている(2月11~13日)。ちなみに1週間前(2月5、6日)では、何と321スクリーンで公開されていた。普通なら、ありえない。
もちろん、公開館数がそうなっているだけで、上映回数ということになれば、かなり減少している。動員も多くなく、だから「39億円台で推移」ということになったのだが、それでもいまだ上映されていることが、何とか40億円台にまで数字をもってきた大きな原因の一つになっている。これは明らかに、配給の東宝の“営業力”のたまものと言っていい。
一つにこれができるのは、シネコンが全国に広まったからである。かつて、上映の系列が盤石だったときには、チェーンで上映が終われば、よほど大ヒットしている作品でもない限り、5週なら5週、6週なら6週で、上映は“完結”していた、しかし今や、チェーン上映が終了しても、各シネコンでは上映の機会を残す作品が比較的多くなった。
「~ヤマト」クラスの興行の作品が、かつての上映システムに乗っていたなら、上映“完結”のほうに入っていただろう。しかし、シネコンはその作品の数字をさらに伸ばすシステムと化した。これはいい悪いは別にして、シネコンの大きな特質の一つであろう。シネコン側にとっては、ただでさえ上映作品が多いなかでやりくりをしないといけないから、大変なことではある。しかし、「~ヤマト」の上映館数を見ればわかるとおり、それは可能なのである。
ただこれは、どの配給会社もできることではない。逆にスタート時点から上映回数が減り、上映が始まったばかりにもかかわらず、観客がその作品を見ることが困難な場合も出てきている。これは、シネコンの功罪の明らかな罪のほうであろうか。
(大高宏雄)