◎依然光明見えない映画興行、「ソーシャル~」に大注目
1月下旬を迎えたが、映画興行になかなか光明が見えない。前回、正月興行の2分割案を提案したが、その他にもいくつか対策を講じる必要性を感じる。しかし、そうは言っても、ヒット作品が突然出てくると、厳しい状況など過去の話のように忘れてしまうのが、この業界の悪しき“慣習”である。このちょっと驚くような脳天気さも、何とかしないといけないのだが。
さて、その正月興行の第2弾作品として、「アンストッパブル」(1月7日公開)、「ソーシャル・ネットワーク」(1月15日公開)、「僕と妻の1778の物語」(同)、「グリーン・ホーネット」(1月22日公開)、「天装戦隊ゴセイジャーVS~」(同)、「犬とあなたの物語 いぬのえいが」(同)などが、現在公開されている。
なかでちょっと抜け出しているのが、「ソーシャル~」と「僕と妻~」だろう。今の段階で最終興収見通しを記しておけば、2作品ともが15~17億円あたりと判断できる。「グリーン~」は3D版の料金増を見込むが、前2作品以外では今のところ10億円到達が難しい情勢だと言える。なかなか光明が見えないという意味は、そうした数字の推移によっている。
ただここにきて、このほどアカデミー賞の8部門でノミネートを果たした「ソーシャル~」が、今後どのような興行を見せていくのかに期待がかかってきた。フェイスブックがらみもあって、先週から報道が増えて関心度が高まり、この22、23日の2週目は、前週土日の103%の興収となったからである。いわば、興行が“上げ潮”になってきた。
今後、どこまで“上げ潮”になるかが注目だが、少し懸念材料もある。今に至るも洋画の歴代トップの成績を誇る「タイタニック」に顕著だったように、米アカデミー賞の主要賞受賞(ノミネートも含め)によって、興行に尋常ではない効果があった時代がかつてあったが、ここ近年はその神通力が弱まってきている感じがすることである。それは、洋画への関心度が低くなってきたことともかかわりがあり、そうした傾向が「ソーシャル~」の興行に微妙に反映されないとは限らないからだ。
さらに、ネット社会を舞台にしたハードな人間関係の中身のありようの故なのか、大都市圏では健闘を見せるも、地方が今一つといった興行になっている現状もある。本来なら、「ソーシャル~」クラスの作品ならば、ノミネート、受賞云々に関係なく、スタート時点から20億円超えが見込まれなくてはならないと思う。そうはならないところに、3D映画の一部の突出した大作を除くと、とたんに興行が厳しくなってしまう洋画の過酷な現実がある気がするのである。
そうした意味から、「ソーシャル~」の今後の興行は、大注目だと言っていい。“アカデミー賞効果“という言葉は今、どの程度生きているのか。一つの判断材料になる。
(大高宏雄)