◎2011年正月興行、厳しい年の幕開けである
2011年の正月興行は、昨年実績を大幅に下回る結果が出た。ある配給会社のデータによると、この時期に公開された作品のうち、興収上位15本の正月3日間の累計興収は、昨年の同じ比較で30%ほども下がったという。実に厳しい成績になったと言っていい。これには、いくつか考えられることがある。
一つが、洋画の大作が予想を下回ったことである。もっとも公開の早かった「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」は、2009年の夏に公開された前作「ハリー・ポッターと謎のプリンス」(最終80億円)に届かないとみられる。3D版の上映があれば、前作は超える可能性もあったが、これは誤算だった。同シリーズは、2作目以降、新作が公開されるたびに興収を落としていったが、今回もまた、その数字の推移に変化はなかったということだろう。
「トロン:レガシー」は、「ハリポタ」以上に予想を下回った。最終20億円台前半とみられるが、TOHOシネマズ日劇の系統であり、高額な宣伝費を考えると、厳しい結果と言わざるをえない。簡単に言えば、映像の迫力、新規性だけでは、人々の関心を強く呼び起こすことは難しくなったということだろうと思う。3D版のみの公開であったが、高めの入場料金のことを考慮すれば、2D版の上映があっても良かったのではないか。
邦画は、「~ヤマト」が現時点では最終40億円台、「相棒‐劇場版Ⅱ-」は健闘しているが、30億円台が一つの目途になりそうだから、前作(最終44億4千万円)超えは難しそう。20億円超えが期待された「ノルウェイの森」も10億円台見込みで、全体として期待の実写邦画は、予想を覆すほど動員力を見せた作品はなかったと言える。
アニメは、「劇場版イナズマイレブン~」が、最終20億円に迫る勢いを見せて健闘しているが、昨年の「ワンピース~」のような爆発力はなかった。好調な出足だった「仮面ライダー×仮面ライダー~」は、10億円台の後半あたりで推移しそうな展開となっている。
今年の正月興行を見て、いくつか感じたことがある。昨年見られたような3D映画の隆盛に、早くも黄色信号が付いたこと。相変わらず、洋画の厳しさが続いていること。テレビ局が大宣伝を繰り広げる邦画の実写作品も、思うような成果を上げるのが難しくなってきたことなどである。昨年の興行実績が歴代最高となる見通しであることなど、もはや過去の話と言っていい。実に早い速度で、映画と映画興行は変わりつつある。それも、負の要素を伴って。そのことをひしひしと感じた正月興行であった。
(大高宏雄)