◎「SP 野望篇」の興行分析をデータからしてみると
大ヒットと言っていいスタートを見せた「SP 野望篇 THE MOTION PICTURE」の興行に触れる。10月30日から公開された本作は、11月7日までの9日間で、興収15億3千万円を記録した(スクリーン数は394)。もちろん、健闘であるが、さあ、この成績をどう見るか。客観的なデータのみに沿って、そのあたりの推移について記す。
ジャンルは全く違うが、フジテレビの製作作品として、それも2部作作品として、2010年の正月作品であった「のだめカンタービレ THE MOVIE 最終楽章 前編」(最終41億円)との興行の比較をしてみよう。
「のだめカンタービレ~」は、09年の12月19日から公開された(スクリーン数は409)。19、20日の2日間の成績は、3億9千万円。「SP 野望篇」は、スタート30、31日の2日間では5億3千万円を記録し、「のだめカンタービレ~」のスタート成績を36%前後も興収で上回った。この時点では、「SP 野望篇」の健闘ぶりが顕著だったと言っていい。
ただ「のだめカンタービレ~」は、正月作品であるから、年末から年明けにかけて動員力を増した。12月19日から10年1月3日までの16日間では、22億1千万円を記録して、早くも20億円を突破。この正月興行期間の成績が大きく物を言って、最終41億円までもっていったのである。
「SP 野望篇」は、2週目の11月6、7日は、スタート2日間のほぼ60%の興収となり、意外な落ち込みを見せた。邦画、洋画問わず、アクションものは2週目、3週目になると、かなり動員を落としていくことが多い。かつてもそうだったが、最近はとくにその傾向が強くなっている。「SP 野望篇」も、2週目の段階では、その傾向に“忠実な”感じがあった。スタートでは、「SP 野望篇」に差をつけられた「のだめカンタービレ~」だったが、その差は早くも縮まった。
公開当初、配給の東宝は、「SP 野望篇」に50億円の見込みを立てたが、少し軌道修正が必要かもしれない。ただ今後、3週目でその落ち込みに歯止めがかかり、好調持続となることも考えられ、情勢は微妙である。ただ、アクションものの限界はあるのではないか。
映画興行の読みは、非常に難しい。私は、30年以上も映画興行の推移を見続けているが、つくづくそう思う。かつてもそうだったが、現在もまた、観客の動向を読むことが、とてつもなく難しいからである。まあ、だからこそ、面白いとも言える。とにかく、数字から浮かび上がってくるもの。その見通し、分析は、簡単なことではない。
(大高宏雄)