ゴールデンウィーク興行のワーナー映画の2本が、明暗を分けている。かつて流行った言い回しを使えば、“邦高洋低”。邦画を扱う同社のローカルプロダクション作品が好調なのに反し、洋画が今一つの展開になっている。
好調なのは、「藁の楯 わらのたて」で、5月6日時点で全国動員77万7946人・興収9億6199万3200円を記録(4月26日公開)。早くも、10億円が目前だ。これは、予想以上の健闘である。GW興行の「図書館戦争」が、同じく6日時点で75万4209人・9億5005万4150円だったので(4月27日公開)、「藁の楯」の健闘ぶりがより顕著だと言える。
一方、ワーナーの洋画は「L.A.ギャングストーリー」だ。6日時点では、10万5515人・1億3113万2200円だった(5月3日公開)。観客層は年配者が中心で、興行の広がりは大きくない。今後の伸びも、限界があるものとみられる。
「藁の楯」は、三池崇史監督のサスペンス大作である。近年の彼の作品では、「十三人の刺客」が16億円を記録している。「藁の楯」はおそらく、その数字を上回るとみられ、そうなれば、2000年以降の彼の作品としては最高興収となる見通しだ。
その理由はズバリ、中身の面白さだろう。骨格のしっかりしたサスペンス小説が、スケールの大きな仕掛けによって、極上のエンタテインメントに仕上がっている。地味なタイトルからはうかがい知れない派手な描写の数々や、周到なドラマの緊迫感が広く浸透したようで、年配者に加えて、若い層もしっかりと集客しているのが本作の強みだ。
「L.A.ギャング~」は、戦後の米・ロサンゼルスを牛耳るギャングの黒幕と、彼を葬ろうとする警察機構との戦いが繰り広げられる。ただ、中身はいつか見た印象が強い。昨年、映画館で起こった銃乱射事件も、製作に大きく影響したようで、暴力シーンは冒頭以外、かなり抑えられた印象をもった。
もちろん、暴力シーンがたっぷりあれば、ヒットするというわけではない。ただどこか全体に、ハードさをセーブした感じがあり、それが全体の印象を小粒にしたようにもみえた。
邦画、洋画という区分けを、あえて今回しているわけだが、ただ一つ、こういうことが言えるのだと思う。今述べた2作品に関する限り、中身のストレートなありようが、当然ながら興行の重要な意味をなすということだ。冷静に客観的に中身を見て、「藁の楯」に興行の軍配が上がるのは、だからしごく当然なことだと考えられるのである。
(大高宏雄)