【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.74】
この3ヶ月、洋画低迷は何度でも指摘していく
2012年04月03日
今年も、すでに3ヶ月が過ぎた。昨年のこの時期は、劇場の休館が相次ぎ、新作の公開延期も続いたことなどから、4月以降の興行に大きな落ち込みが生じたのを思い出す。
この3ヶ月の作品別の興行実績。昨年の12月公開からこの3月までに公開された作品の興行トップ5は次のとおりである(数字は興収、いずれも推定)。成績の中身はともかくとして、あまりの代わり映えのなさに、少々愕然としたというのが、偽りのない私の感想である。
▽「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」=54億円
▽「ALWAYS 三丁目の夕日'64」=35~36億円
▽「映画ドラえもん のび太と奇跡の島 アニマル アドベンチャー」=34~35億円
▽「僕等がいた 前篇」=23~25億円
▽「ライアーゲーム 再生」=22~23億円
トップの「ミッション~」以外、すべて東宝配給作品である。シリーズもの、定番アニメ、純愛もの、ヒット作品の続編と、同社の配給戦略が、ものの見事にはまった結果と言っていいだろう。この言い回しはすでに言い飽きたが、現実がそうなのだから、致し方ない。
なかで特筆すべきは「ドラえもん」の好調ぶりで、昨年はもちろんのこと、一昨年の実績(31億6千万円)さえあっさりと上回るのが確実になった。震災で躊躇する面が大きかった昨年の反動が、少し見られたのかもしれない。宣伝面でのテコ入れなど、子どもたちが関心をもつような様々な工夫が、今年はさらに強化されているのも見逃せない。
反面、例によって洋画の低迷ぶりが目立った。この言い回しもすでに言い飽きたが、この状態が続く限り、私は何度でも指摘していく。洋画の回復なくして、日本の映画興行の盛り上がりはないからである。
その洋画に関して、今回は一言だけ言っておくなら、1月はともかくとして、2月、3月と、洋画の話題作が相応にあったなかでの低迷ぶりは、より深刻の度合いを増したのではないだろうか。
「ヒューゴの不思議な発明」や「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」はかろうじて10億円を超えるが、「戦火の馬」が10億円に届かない現実を前にすると、洋画興行の意味を改めて考え直すことも必要ではないかと思うのである。
(大高宏雄)