松竹、東宝、東映の邦画3社は平成24年2月期中間決算(東映は同年3月期)の発表をそれぞれ控えているが、敢えてこの時期に3社の株価の推移について触れてみたい。
10月6日の3社の終値は、松竹728円(前日比1.25%増)、東宝1370円(2.70%増)、東映374円(1.016%増)をいった具合で、これは業界の一般常識なのだろうが、この株価は必ずしも企業業績を反映したものではない。2008年9月のリーマンショックやギリシャに端を発したヨーロッパの経済危機などグローバル経済の影響を受けている。
東宝のここ3期の決算をみると、平成23年2月期(売上高1989億円/営業利益224億円/経常利益231億円/純利益113億円)、22年2月期(2016億円/191億円/201億円/78億円)、21年2月期(2134億円/232億円/257億円/22億円)と、映画事業を中心とした日本を代表する超優良企業と言っていいであろう。株価といえば株式分割以降、1500円台から1300円台を推移しており、企業業績に見合った株価とは言えないのではないか。
東映もここ3期の決算は、23年3月期(売上高1088億円/営業利益103億円/経常利益122億円/純利益51億円)、22年3月期(1041億円/86億円/95億円/24億円)、21年3月期(1076億円/107億円/108億円/11億円)と東宝ほどではないが、好決算を計上している。これに対して株価は2006年8月の約900円台をピークに下がり続け、6日の374円という状況で、企業業績に比べ株価は低すぎると言っていいであろう。
この2社に対して松竹はその反対の例と言える。ここ3期の決算は23年2月期(売上高902億円/営業利益33億円/経常利益17億円/純利益7億円)、22年2月期(932億円/34億円/19億円/7億円)、21年2月期(949億円/15億円/7億円/1億円)であり、今期は赤字決算が予想されている。6日の終値728円はほぼ東映の倍の株価である。同社の株価は歌舞伎の株主優待券制度が支えていると言われているが、そのいい例が9月27日に発表された、市川亀治郎の市川猿之助襲名披露及び香川照之の歌舞伎俳優デビュー(9代目市川中車)であろう。発表当日の株価が681円、報道されたその翌日が701円、その後値を上げ6日の728円になっているのである。
株主優待が重要視される現在、前2社に比べ歌舞伎という特異な商業芸術を持つ松竹の企業特性が表れた結果であろう。
(代表取締役社長:指田 洋)