震災で変わった?テレビとラジオの特性…
2011年04月20日
東日本大震災以降、ラジオへのニーズが高まっている。
災害時に最も強く、威力を発揮するのは携帯電話でも、ましてテレビでもなかった。乾電池でリアルタイムな情報の聴けるラジオだったからだ。
震災後の3月27日にフジテレビ系で放送した「FNS音楽特別番組 上を向いて歩こう~ うたで ひとつになろう日本~」にしても「被災地ではテレビを観ることが出来ない」と、ニッポン放送に協力を要請、テレビで放送後にラジオでも放送した。
だが、メディアの違いがあるにせよ、やはりテレビとラジオでは、震災の音楽番組だけを見ても大きく違うものだということを改めて痛感する。
ニッポン放送が今週の土曜日――23日に放送を予定している「東北出身アーティストが勢揃い~歌で元気になろう!ニッポン」を例にとっても分かる。これは、同局の看板番組「徳光和夫 とくモリ!歌謡サタデー」の中で企画しているもの。基本的には徳光和夫の司会(ナレーション)で「歌」と「メッセージ」を紹介し「被災地の復興を後押しする」ものだという。
徳光は、震災以降、巨大地震と大津波で町が壊滅状態になった陸前高田や大船渡など被災地を自ら訪れたそうだ。そこで思ったことは「被災者のみなさんは、太陽の元では元気に振る舞っているが、夜になると泣いている」ことだったと言う。そんな被災者の人たちに対して「歌で元気になってもらいたい」と今回の企画を提案してきたのだという。
徳光は、テレビで育ってきた人であるが、ラジオの番組を担当してから企画が「人間的になった」感じだ。もちろん「歌で元気になってもらいたい」というのは、テレビの企画でも同じだろうが、ラジオの場合は、出演者の顔ぶれが大きく違う。
何と、森田健作・千葉県知事を始め吉幾三(青森県)、さとう宗幸(宮城県)、千昌夫・新沼謙治(岩手県)、クミコ(茨城県)など被災地に縁のあるアーティストから、みちのく演歌を歌う山本譲二、川中美幸そして、被災地を慰問に訪れたコロッケ・伍代夏子まで、10組。森田知事は、千葉県内にも被災地域が多いだけに「全く関係のない妊物」ではない。
いずれにしても、この顔ぶれではテレビでは無理。しかし、ラジオとしては十分に成立する。そこが大きな違いである。
番組のプロデューサーは言う。
「これだけの大物アーティストがニッポン放送のスタジオに一堂に集まって生放送で歌を共演するのはラジオとしては初めての試み。震災以来、全国各地から被災者への支援の輪が広がっていて、今や“被災地の復興”は、国民全体の合い言葉になっている。そういった中で、被災地が復興し日本が元気になって行くために“歌の力”を全面的に打ち出した番組にしたいと思っている。“歌は心”。アーティスト達の“心のメッセージ”は、必ず人の心に直接届き、元気を与えます。そして“歌”の歌詞に歌い込まれたふるさとの風景も、人の心の中に永遠に残り続けるはず」。
なるほどである。価値観の問題はあるにせよ、テレビに比べるとラジオは人間的な部分で企画や出演者が固まるような気がする。徳光はもちろんだが、出演するアーティストも全員がパーソナリティーなのかもしれない…。
23日は早朝5時30分から10時50分までの5時間20分に亘って、東京・有楽町のニッポン放送・イマジンスタジオから生放送するが、東京の聴取者と、被災地の聴取者では、全く感じ方が違うだろう。しかし、それがラジオの特性なのかもしれない
(渡邉裕二)