異色のモノクロ無声スペイン映画『ブランカニエベス』を先日試写で観ました。非常にユニークな作品です。
モノクロ無声ってだけでも珍しいのに、童話「白雪姫(ブランカニエベス)」と「闘牛士」を融合させたストーリーという、初めて聞いた時は「どんなキワモノ映画!?」と反応してしまったような珍しい作品。
しかも、キワモノどころか、スペインのアカデミー賞にあたる「ゴヤ賞」で10部門も受賞し、米アカデミー賞の外国語映画賞のスペイン代表にも選ばれるという、「名作」というからまた驚き。全然イメージが沸かないまま都内の試写室に赴きました。
(あらすじ)物語の主人公は、父に天才闘牛士を持つ少女カルメン。実母が死に、継母に虐げられながら育つ(このへんはシンデレラ?)。そしていよいよ命まで奪われそうになったところで、小人の闘牛士団に命を救われる。彼ら小人と巡業を共にし、カルメンは闘牛士としての能力を発揮し始める―。
まず、モノクロでサイレントであることが、この作品ではフルに生きています。童話の世界をモチーフにしていること。『ウィロー』ほどではないですが、小人役の俳優がたくさん出演していること。1920年代が舞台であること。それらの要素をより幻想的に、童話的に見せるためには、カラーで音声のある普通の映画として作るよりも、このモノクロ無声がベストであることを強く感じます。
そして何より、女優さんの美しさ、特に継母役のマリエル・ベルドゥは、モノトーンによってその美しさが倍増して見え、悪い女なのに惚れそうになりますよ。
ストーリーの後半は詳しくは申し上げませんが、カルメンが広い闘牛場で、天才闘牛士である父の姿を知る大勢のファンの声援を背中に浴びながら、闘いに臨むシーンは感動もの。
その一方、結末は意外…というか、「日本人ならそういう発想はしないよね。いや、考えはしても、絶対そんな終わらせ方しないよね」という感じで、好き嫌いがはっきり分かれそうな印象。けっこうロマンチストな私は後者でした。けど「面白い締め方するな~」と感心したのでした。
12月7日公開。年末に観ておきたい一本です。