かつては日本全国に万単位あったビデオレンタル店も、いまや3000店舗台。日本映像ソフト協会の調査結果を挙げるまでもなく、売上も年々厳しくなっています。
そんな中、ビデオレンタル店を再活性化させるべく、KADOKAWA、松竹、東映、東宝、日活の邦画5社が、シニア層のビデオレンタル店利用へ本腰を入れ始めました。
3000万人と言われる日本のシニア層の中で、日常的にビデオレンタル店を利用している人は、ある調査によると、たった1%程度なんだとか。残りの99%も開拓しない手はない!ということで、5社がある施策を打ちます。
来年1月から始める「昭和キネマ横丁」というキャンペーンがそれ。アクション系の洋画が多いビデオレンタル店で、シニア層に響くと思われる1970年前後の名作日本映画をずらりと並べてしまおうというのです。
正直、古い日本映画はレンタル店では回りません。しかも、仕入れ値がけっこう高い。必然的に品薄の傾向になるわけです。でも、それでは当時の映画に慣れ親しんだ世代を店舗に呼び込むのは難しいでしょう。
「昭和キネマ横丁」は、その難点をクリアする画期的な試み。5社が旧作30作品ずつを出し合い、計150作品を採算度外視の格安でビデオレンタル店に販売するという粋な企画なんです。
しかも、ただ店舗に並べるだけではありません。各社が800万円ずつ出し合い、計4000万円を投入して宣伝を仕掛けます。旧作の日本映画でこれだけの宣伝費を出すのは異例のこと。
この企画、実は発起人は5社ではなく、ビデオメーカーのハピネット。5社の足並みを揃えるために、昨年から担当者の人が奔走していました。苦労しているのは聞いていましたが、1年経ち、ようやく実現にこぎつけました。日活作品の販売を担当するハピネットにしても、5社の作品がたくさん売れたとしても、たいした儲けにならないはず。関わった全ての会社が、儲けはとりあえず置いておいて、業界を盛り上げるために“男気”を見せた企画と言っていいでしょう。
当欄をご覧になっている方で、もしまだビデオレンタル店を利用したことがないという方がいれば、来年1月22日にスタートする「昭和キネマ横丁」を機に、ぜひ一度足を運んでみてください。150作品のうち、半数は初めてレンタルでリリースされる映画です。