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新潟国際で『リンダは~』監督が自由な作風説明

【FREE】新潟国際で『リンダは~』監督が自由な作風説明

2024年03月23日
キアラ・マルタ監督(右)とセバスチャン・ローデンバック監督(左) キアラ・マルタ監督(右)とセバスチャン・ローデンバック監督(左)

 第2回新潟国際アニメーション映画祭期間中の16日、若手クリエイター育成のためのプログラム「新潟アニメーションキャンプ」の一環として、4月12日に公開されるアニメーション映画『リンダはチキンがたべたい!』(配給:アスミック・エース)のキアラ・マルタセバスチャン・ローデンバック両監督による特別講義が開志専門職大学アニメ・マンガ学部で開催された。

 同作は、チキンをめぐる大騒動を描くコメディ作品。昨年のアヌシー国際アニメーション映画祭で最高賞を受賞し、先ごろ池袋で開催された東京アニメアワードフェスティバルでも長編グランプリを獲得した。

 キアラ監督は、子供向けのアニメーションはファンタジーの世界を描いたものや、超能力を持ったキャラクターの作品が多く、現実世界を描くものが少ないため、同作では現実世界で子供に相応しい映画を作ることを目的にしていたという。また、自身はイタリア出身であり、「コメディはイタリア人の心」であるため、今作もテンポの良い、なおかつときどきメランコリーな映画にしようと考えたと語った。

 チェコやハンガリーのヌーヴェルバーグに興味を持っていたというキアラ監督は、自身の作品においても、新しいことや、扉をぶち壊すことが好きだと話し、今作でも斬新な制作手法を取り入れた。その1つがプレスコ(先に声優の声を収録)だ。単なるプレスコではなく、学校のシーンでは実際に学校を訪れて俳優に演技をしてもらいながら収録を行うなど、現場で音声を録る作業から開始。子役は額にマイクをつけて演じたこともあるという。この意図についてキアラ監督は「絵のことを考えずに自由に録ること」を重視したと説明した。

 また、登場人物が多く、製作費が膨大になってしまう見込みだったため、作業の負担を減らすことも意識した。セバスチャン監督は従来から「アニメーションにするのは長くて辛い仕事。どうやったら軽くできるのか」を研究してきたことを説明し、今作ではキャラクターの動きを表現するために必要な描線は描き、そうでない描線は、観客の想像力による補完を利用し、あえて描かない、自由度の高い作画を意識した。セバスチャン監督は、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』に絵が似ていると感じたと話した。

 また、主人公の子は黄色、母親はオレンジ色といったように、登場人物を一色で塗るという大胆な手法も取り入れたことで「人がいっぱい集まったシーンでも楽にできた。(キャラが)遠ければ線なしでも大丈夫だった。色塗りはラフで、線をはみ出してもよかった」(キアラ監督)という。このように徹底してアニメーション制作にかかる「重さ」の軽減を図った結果、同作のアニメーターはたった7人で済んだという。キアラ監督は「映画制作のそれぞれのステップに何のロックも無い。これが私のヌーヴェルバーグ」と、自由な考えで制作した同作に胸を張った。

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。