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セミナー「コンテンツプロデュースの極意」に『るろうに剣心』大友監督ら登場

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セミナー「コンテンツプロデュースの極意」に『るろうに剣心』大友監督ら登場

2020年11月18日
 コンテンツ東京(主催:リード エグジビション ジャパン)のセミナー「コンテンツプロデュースの極意」が10月23日、東京ビッグサイトで行われ、PR・マーケティング会社「The Breakthrough Company Go」の三浦崇宏代表取締役、『るろうに剣心』の大友啓史監督、「全裸監督」のプロデュース会社「Nemeton」の橘康仁代表、作家のエージェント会社「コルク」の佐渡島庸平代表取締役が登壇。広告・映画・ドラマ・編集と様々な舞台の第一線で活躍する4氏が、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』と『TENET テネット』を中心に、ヒットの理由について語り合った。


セミナー「プロデュースの極意」(左より三浦、大友、橘、佐渡島の各氏).jpg
(左より三浦、大友、橘、佐渡島の各氏)


 三浦氏は、悟空やルフィといった猪突猛進型の主人公とは異なり、『鬼滅の刃』の主人公・炭治郎を"ダウナー型"(暗い)と表現。過剰に前向きなことは言わず、敵にも同情するような優しさが、多くの人の気持ちにフィットしたのでは?と分析。ほかにも、敵にも悲しい背景があることや、炭治郎が妹を抱えて闘う姿が共感を得たと語った。大友監督も、『るろうに剣心』の主人公・剣心は贖罪を背負っているとし、三浦氏が語る炭治郎の魅力にうなずきつつ、ヒロインの成長を描くNHK「朝ドラ」が長年支持を得ているように、炭治郎の成長のプロセスが用意されていることもヒットのポイントに挙げた。橘氏は、炭治郎を見守る援助者が多く、母性が作品に含まれているとし、大友監督も「やっぱりみんな優しさを求めている」と納得の表情を浮かべた。

 佐渡島氏はここで話題を変え、ハル・ベリーが批判を受け、男性のトランスジェンダー役を降板した話題に触れ、「クリエイティブなものは経験に関係があるか?」という質問を投げかけた。橘氏は「1段目のロケットまでは必要。そこからはガムシャラになっているのが強い」と、経験で固めた地盤をもとに、新たな発想を積み上げていくことが重要と説き、三浦氏も「AIは人間。(誰もが)人と違うものを経験し、脳にグチャグチャに入っている」とし、それを個人の武器として使うべきという考えを述べ、両氏とも経験はクリエイティブにとって必要という認識を示した。

 大友監督は「AI」というワードに反応し、『TENET テネット』を手掛けたクリストファー・ノーラン監督が、「コロナ下の映画界を救う」とまで言われた大作映画を、1度見てもわからないような難解な作りにした点について、「世界最高のフィルムメーカーのAIチップに破綻を感じる。どこか破綻を飲み込まないと突破できるものにならないのでは」と、傑作を生みだすためには、周りの人間には理解できないような考えが必要という考えを示唆。一方で「そのリスクを抱えるチーム、そういうことを言ってくれる人はなかなかいない。ネットフリックスが取り組もうとはしているが…」と、冒険が難しい状況を憂いた。一方で「僕らの時代は勝新太郎、ショーケンというやばい俳優がいて、懐に携えたナイフで時代に斬り込んでいった。『八甲田山』は3年間かけて撮影し、雪まみれで撮った。高倉健は家を抵当に入れて現場に飛び込んだ。そういう時代もあった。流した汗は画に映る」と熱く語った。

 三浦氏は、「『テネット』は考察ブームが起き、考察することがエンターテイメントになっている。ノーランなのかそのチームの誰なのかはわからないが、そのブームまで計算していたのでは」と語り、「(たとえ難解な映画でも支持してもらえると)観客を信頼している。それがギリギリのラインでハマった」とした。佐渡島氏は、世界中でわかりやすい映画が求められる中、その流れに抗う「のろしを上げるような映画」と評した。

 次に佐渡島氏が、会場に詰め掛けた500人の参加者に対し、『鬼滅の刃』と『テネット』を見たかという質問すると、両作品とも大勢が手を挙げた。その状況を踏まえつつ、3人に対し「ヒット作を見ることは(クリエイティブに)重要か?」と質問。橘氏が「むしろ情報を制限している。代わりに(映画やドラマではなく)ドキュメンタリーや演劇、脱出ゲームなどに足を運び、違うインスピレーションを得ている」と話すと、大友監督も「追っかけてまでは見ていない。ミニシアター系の方が多い。公共のために作ると、どこか1つのものになってしまう」と、両氏ともヒット作の網羅には関心がない模様。佐渡島氏も数々の作家と仕事をする中で、ヒット作を数多く輩出している作家は、意外にも他人のヒット作を読んでいないと話した。ただ、今は他人の作品に関心がなくとも、クリエイターとしての基礎を固める過程では、誰もが多くの作品に触れていることは4人とも同意した。また、三浦氏は他人の作品を見る上では3つのことを意識しているとし、(1)自分が何を考えて何を見るのか、フィルターが大事、(2)見たあとにどう思ったのかを考える、(3)アーカイブを見て、過去にやられていないことで自分に何ができるか、を重視していると語った。

 なお、セミナー冒頭の挨拶の際、大友監督は2021年GWに公開予定の最新作『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginnig』について、2部作で製作費30億円のプロジェクトになることを明かし、エンドロールには1200~1300人ほどの名前が流れると述べた。さらに、「大げさでなく命を懸けてやった」「仕上がりも含めて"突破したな"と思う」と、かつてない力作になることを予感させた。


取材・文 平池由典

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