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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.79】
「貞子 3D」、なりふり構っている場合ではない

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.79】
「貞子 3D」、なりふり構っている場合ではない

2012年05月15日

 前回、 “東宝の超独壇場を許すまじ” と息まいて、一部で物議をかもしたようだが、この5月12日に到り、「貞子 3D」がヒットして、少しその牙城に食い込んで、私の溜飲を下げてくれた。貞子露出の宣伝に対して、あざといやり方だとかといった好意的ではない見方もあるようだが、私はそう思わない。

 配給の角川映画にとっては、何にもまして、ヒット作品を出すことが今はとても重要である。それがないと、組織が立ちゆかなくなる。なりふり、構っている場合ではないのである。その構わなさが、今回出たのではないか。角川映画にすれば、このヒットは次につながる意味あるものと、私は考えた。

 「貞子 3D」の成績は、5月12日=動員7万6075人・興収1億2128万6400円、13日=7万8073人・1億2512万7700円。2日間累計=15万4148人・2億4641万4100円というものである(スクリーン数は214)。

 東宝からすれば、見なれたスタート成績かもしれないが、角川映画から見ると、全く様相が違った数字になる。2009年のヒット作である「ドロップ」(最終19億円)を7千万円ほど上回り、社名が今のようになってからでは、最高のスタート成績だという。5月12、13日の興行ランキング(興行通信発表)では、「テルマエ・ロマエ」に次いで2位。「宇宙兄弟」を抜いた。

 小学生から高校生が昼間に多く、夜になると20代、30代まで広がりを見せたという。今回、高校生が基本料金1000円のところも多く、だから料金はこれに3D料金の上乗せを加えた1300円ないし1400円となる。この料金設定が、比較的、好ましかったこともあったろう。20代、30代の観客は、基本1200円のレイト上映回が目立つ傾向があり、3D映画を見るなら、できる限り料金は安い所で見たいという当たり前の結果が出たということだろう。

 野球の始球式やらでも駆り出された貞子キャラの “派手な” 露出が、功を奏したことは言うまでもないが、貞子キャラそのものに、インパクトがあったことも見逃せない。怖さからグロテスク、さらに笑いへというパターンを踏みつつあるこのキャラに、若者たちは言いようの好奇の視線を寄せた。それがさらに、3D映像になることで、怖さとバカバカしさが入り混じるアトラクション的な関心が増したというわけだ。
 
 ヒットがないと批判し、ヒットが出ると、中身とやり方が悪いと言う、無責任だな、一般ピープルは。東宝のヒット連発に、麻痺しているのではないか。一度、ヒットを出すことのとてつもなさに、思いをはせてみる必要があろう。それを踏まえての批判ならば、聞く耳をもつ。ヒットがない会社は、滅ぶのである。

(大高宏雄)

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