『エイリアン2』
(前編から続く)
ソフト版とテレ朝版が全然違う『ID4』
――『インデペンデンス・デイ』は、音源は前から見つかっていたのですか。
菅原 すぐに見つかりました。この作品の吹替が面白いのは、テレビ朝日版とソフト版で全く演技が違うのです。通常、1人のキャラクターに別々の声優さんを起用する場合でも、同じ傾向の方を起用するケースが多いのですが。特に大統領役は、テレ朝版は古川登志夫さん、ソフト版は安原義人さんと、まるで違うタイプです。古川さんは、私の世代にとっては「うる星やつら」の諸星あたる。もう少し下の世代なら「ドラゴンボール」のピッコロ、そして今の若い人なら「ワンピース」のエース。全世代でファンがいらっしゃいます。その古川さんが、大統領となるとまた違う魅力があります。「あたるなのに…」と(笑)。対するソフト版は『マッドマックス』の安原さんですから。同じビル・プルマンでも全然違って面白いのです。
ジェフ・ゴールドブラム演じるデイヴィッドも、磯部勉さんはハン・ソロでも知られるヒーロー声で、大塚芳忠さんはアクの強い声。お二人が同じ役をやるのはすごく面白く、ここは吹き替えファンに喜んでもらえるポイントだと思います。皆さんご贔屓の声優さんがいると思いますが、ぜひ聴き比べてほしいです。
――BOXの中に山寺さんと古川さんのインタビュー集が入るということですが、お二人は何か印象的なエピソードを話されていましたか。
菅原 山寺さんは、テレビ版とソフト版で同じ役が来ることはすごく珍しいパターンだとおっしゃっていました。私は、両方聴き比べして、同じウィル・スミスでも、ほんの少しテレビ版の方が演技が激しかった気がして、そのことを山寺さんに聞くと、演出家が違う前提はあるのですが、「声優として、同じ役が来るのは珍しいから、2度目に来た時はもっと良く、もっと強めにやろうとか、良い演技をしようという煽りが出たんじゃないかな」とおっしゃっていました。古川さんにとっても、真面目な大統領役というのはすごく珍しくて、『インデペンデンス・デイ』自体をお好きでらっしゃいました。
――コンセプトアート集も同梱されていますね。
菅原 本社が20周年を記念して作ってくれました。絵コンテ集のような感じで、アーティスティックで、いい感じです。本当にこの通りセットが作られたんだなと思います。
――売上目標は何本ぐらいですか。
菅原 『吹替の帝王』シリーズの中でもベストに入る売り上げ本数を期待しています
。
『トゥルーライズ』はいまだGO出ず
――「吹替の帝王」の今後のリリース作品についてですが、まず『トゥルーライズ』は今どうなっているのでしょう。
菅原 これは、もう何年もオファーを出しているのですが、ジェームズ・キャメロン監督が『アバター』新作の撮影中につき、まだ許可が出ません。
神田 全世界的に『トゥルーライズ』はまだブルーレイが出ていません。我々も待っているのですが…。もう次世代のウルトラHDブルーレイまで出てきてしまって、どういう形で出るのか(笑)。
菅原 でも、諦めないので、ファンの方は待っていてほしいです。新作を発表するごとに「『トゥルーライズ』は?」と聞かれて、胸が痛いです(苦笑)。
――音声素材は揃っているのですよね。
菅原 揃っているどころか、追加収録もしていますから。『コマンドー』と一緒にやっています。
神田 発売する時は、完成版で出せます。
菅原 GOさえ出れば、いつでも出せる状態にしてあります。
ついに発売!『エイリアン2』
――『トゥルーライズ』以外で、準備を進めている作品はありますか。
菅原 あります。これはインパクトがあると思いますよ。第13弾に『エイリアン2』が決まりました!
――え!これもジェームズ・キャメロン監督作品ですが。
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菅原 こちらはGOが出ました。8月30日に発売します。『エイリアン2』は今年で30周年。30年前の8月30日に日本で劇場公開されました。今回は、史上最多の6種類の吹替を収録しています。テレ朝版は、戸田恵子さん、山像かおりさん、弥永和子さん。そして、TBSの鈴木弘子さん、ソフト版は幸田直子さん。幸田さんでもVHS版と、完全版の時に録り直した2つのバージョンがあり、計6種類となりました。リプリー役は5人で、テレ朝版だけでも3人います。テレ朝さんは完全版も放送しており、その時に声優も替えています。
――なぜテレ朝はそんなに何バージョンも作っているのでしょう。
菅原 理由は存じ上げませんが、この作品を大好きでいらっしゃるんだと思っています(笑)。
――ファン待望でしょうね。
菅原 『エイリアン』の第1作を発売した時(14年11月)に、「『2』はどうした?」という声も挙がっていたのですが、当時は許可が下りなかったので…。今年は30周年で、全世界で要望が高まるのでGOが出たのでしょう。ようやく発売することができます。ちなみに、4月26日に情報を解禁しました。この日はFOXが定めた「エイリアンデー」なのです。劇中で、初めて発見された惑星の名称「LV‐426」から、4月26日に決まりました。
――これだけ多くの種類を収録して、価格はいくらですか。
菅原 今まで1番多く収録したのは『エイリアン』の5種類で、その時と同じ価格で、7407円(税別)です。台本は3冊入れます。インタビューは、鈴木弘子さんと田中秀幸さんの予定です。田中さんは満を持して「吹替の帝王」初参戦です。すごく嬉しいのは、最近のインタビューで、声優さんに「『吹替の帝王』はご存じですか?」と聞くと、「もちろんです」と言われるのです。これは去年まではなかったことで、ファンの方のおかげです。山寺さんにも「知っていますよ」と言われました。
――声優さんの間でも話題になってきているのですね。最後に、『エイリアン2』以降のリリース予定はいかがでしょう。
菅原 まだ予定はありません。準備ができているのが『トゥルーライズ』くらいです。『エイリアン2』も出せましたので、皆さん『トゥルーライズ』も信じて待っていてください! 了
(前編に戻る)
取材・文/構成: 平池 由典