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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.168】
活況夏興行、今後の“反動”あるやなしや

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.168】
活況夏興行、今後の“反動”あるやなしや

2015年08月28日
 この8月末、今年の夏興行は、2000年以降ではもっともハイレベルの成績になっていると、私は新聞、雑誌、WEBなど、至る所で発信している。映画の情報は、とくに好ましい現象が起こったときは、できる限り多くの場所(メディア)で伝えていこうと常々思っているからだ(逆の現象も重要だが)。夏興行の賑わいは、映画発信の重要なポイントと考える。なのに、意外やマスコミは、それほど熱をもって取り上げない気がする。まだまだ、こちらの力不足とみえる。

 さて今年は、現時点で夏作品の実に7本が、興収30億円を突破している。いちいち数字は上げないが、「ジュラシック・ワールド」「バケモノの子」「HERO」「ミニオンズ」「インサイド・ヘッド」「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」の7本である。「進撃の巨人」は今後、この“30億円カンパニー”に入るかどうかといったところだ。

 大変な盛況だと言える。2000年以降、もっとも興収が上がったのが2001年の夏だ。この年は、「千と千尋の神隠し」「A.I.」「パール・ハーバー」「ジュラシック・パークⅢ」「猿の惑星」などがあった。今年との作品別興収累計の比較はしないが、30億円を突破した作品は、今年のほうが1本多い(現時点)。今年の特徴は、「千と千尋」のような突出した作品はなかった代わりに、比較的バランス良く、ヒット作品が相次いだことだ。

 最終的には、「ジュラシック」がトップを維持してくるだろうと思われる。現時点で、すでに60億円を超えている。70億円が当然視野に入り、80億円あたりまで伸ばしてくる可能性もある。ただ、8月15、16日をピークに、お盆明けは各作品とも、軒並み数字を落としている。これは、例年と同じである、お盆期間が夏興行のピークになり、その時期を過ぎると、途端に勢いが弱まっていく。

 今夏は、とくに作品の地力勝負だと、何回も言っている。その伝でいくと、トム・クルーズの存在自体が、今やハリウッドの“伝説”と化していることを、ぐんぐんこちらに迫ってくるかのような感動を引き起こす「ミッション~」あたりが、ごぼう抜きをするかもしれない。すでに、先行の「バケモノ」「HERO」「インサイド」などが、少々息切れし始めている。

 いいことづくし、ではないと思う。これだけの話題作が揃うのは、本当に稀有なことだと言っていいからである。例によって、今後の“反動”が、どう出てくるか大いに気になる。映画は夏で終わった、などと考える人たちも多いかもしれない。そうなると、この“貯金分”が、またしても食い尽くされ、例年並みの成績に終わってしまう可能性もある。実際、7月までは昨年より低レベルなのだ。

 盛況の夏興行を、今後につなげる手立てはないかと、こちらが例によって言い募っても、どうしようもない。作品ありき、になってしまうからだ。秋以降の興行は、例年以上に注目したい。映画の力は、本物なのか。そうではないのか。

(大高宏雄)

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