現代のベートーヴェン・佐村河内守、新作発表 被災者に捧ぐピアノソナタ
2013年06月13日
「交響曲第1番《HIROSHIMA》」がクラシックで異例のヒットとなり“現代のベートーヴェン”とも呼ばれる作曲家・佐村河内守(さむらごうち・まもる)氏が13日、新作「ピアノ・ソナタ第2番」を都内で発表した。東日本大震災の被災者に捧げる作品で「一番言いたいのは、3・11を風化させないこと」。韓国の世界的女流ピアニスト、ソン・ヨルムの演奏で一部が初披露された。
佐村河内氏は、天才ながら不遇の連続、30代で音楽家の命ともいえる聴力を失った。しかし絶対音感を頼りに、絶望の先にある希望の調べをつむぎつづけている。テレビで紹介されたのをきっかけに、「交響曲第1番《HIROSHIMA》」が空前のヒット。総合アルバムチャートでトップ10入りし、売上17万枚を突破した。特に震災被災地で“奇跡のシンフォニー”として受け入れられた。
待望の新作で、日本を襲った未曽有の悲劇に向き合った。震災孤児との交流を経て作った「レクイエム」を「より多くの方に聴いてもらいたい音楽としてスケールアップさせた」と紹介した。壮大かつ超絶技巧を駆使した心ある鎮魂ピアノ・ソナタ。「技術だけでなく何より人間性が素晴らしい。この人に弾いてほしい」とソン・ヨルムに献呈した。
「いくじがない人間だから震災後に動く勇気がなかった」。それでも自身の交響曲が被災地の希望になっていると知り、現地に何度も足を運んだ。震災から2年。冬の宮城・女川町で野営した翌朝に「鉄の扉が開いた。おこがましいと思っていたけれど、震災で亡くなった方々が『書けよ』と許してくれたように感じたんです」。犠牲者の怒り、苦しみ、悲しみを汲んだ旋律とともに、記憶を次代に語り継ぐ。
9月16日に横浜みなとみらいホール 大ホールで世界初演される。以降、全国で公演予定。10月23日発売の「佐村河内守:鎮魂のソナタ」に、既作の「ピアノ・ソナタ第1番」、2011年に初演された商品「JURI」とともに収録される。
「海外では子どもの頃からクラシックを聴いて育つ。日本では名前は出せないけれどアイドルが表立っているなかで、僕みたいな者がきっかけになりクラシックの裾野が広がればと思っている」と話していた。公開中の映画「桜、ふたたびの加奈子」の音楽も手がけている。
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