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“金の卵”に聞く―日本映画学校「おってくらんし」大西栄理子監督

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“金の卵”に聞く―日本映画学校「おってくらんし」大西栄理子監督

2011年02月23日

大西栄理子監督 (2).JPG 日本映画学校の昨年度卒業制作『おってくらんし』が、快進撃を続けている。

 日本映画テレビ技術協会主催「そつせい祭」グランプリなど国内の学生映画賞だけでなく、海外でも「ザ・コダック・フィルムスクール・コンペティション」でアジア太平洋地域優勝に日本作品で初めて輝くという快挙を達成。このほど仏クレルモン・フェラン国際短編映画祭に招待された。

 四方を山に囲まれた自然豊かな村で、闊達な少女とはみだし者の老人とのひと夏の交流を描いた物語。2010年のキネマ旬報文化映画ベスト・テンで次点にランクインした傑作は、今年度の「卒業制作上映会」(2月25~27日/東京スペースFS汐留)で“凱旋”特別上映される。大西栄理子監督(22)に話を聞いた――。



――本当に美しく力強い映像詩です。

大西 ありがとうございます。卒業制作は自分のもうひとつの始まりだと思ったので、自分の原点を描きました。ストーリーは創作ですけれど、劇中の村は生まれ育った環境そのままなんです。信号もコンビニもなくて電車も通っていなくて、携帯の電波も入らない、和歌山の南の端にある村で高校3年生まで育ちました。映画を通じて、自分の原点を思い出してもらえたらと思っています。

おってくらんしイメージ.jpg――制作当時の思い出を教えてください。

大西 自然を相手にする撮影が本当に大変でした。天候も変わりやすいし、動物の撮影は運との戦いでした。どうしても夏を舞台にしたかったんですが、秋にしか撮られなくて。それでも、制作部が頑張ってふさわしいロケ地を探し出してくれました。本当に色んな人に助けてもらいました。スタッフが誰か一人でも欠けていたら完成しなかった作品です。日本映画学校で出会った“仲間”は私の宝物なんです。

――影響を受けた映画作品や監督を教えてください。

大西 ちゃんと映画を見るようになったのは東京に出てきてからなんです。地元では、車で1時間以上走らないと映画館はありませんでしたから。東京では本当に色んな映画が見られて楽しいです。映画を見るたびに影響を受けています。チャップリンは大好きで「街の灯」は何度も見返しています。邦画だと橋口亮輔監督の人間の描き方はすごいなと思います。同世代の監督は特別意識はしていませんが、良い作品を撮っているのを見ると、やっぱり悔しさは感じます。

――クレルモン・フェラン映画祭に招待されました。

大西 本当に刺激的な体験でした。皆が本気で作品や自分を売り込んでいて、過去に参加した国内の映画祭にはない環境でした。それに海外の大学から出品された作品の完成度があまりにも高くて圧倒されました。(表彰されたカメラマンの)浮邉佑希もレベルの違いに打ちのめされていました(笑)。それでも作品に込めたメッセージは海外の方にも伝わったと感じました。

日本映画学校上映会.jpg――そして凱旋上映が控えます。

大西 本当にいいのかな?って感じですが、(昨年上映した)16ミリから35ミリに変換してより綺麗になっていますし、タイミングも修正しているので楽しみにしてください。また今後も色んな映画祭に出品していく予定です。できるだけ沢山の方に見ていただきたいです。

――大西“先輩”に憧れる後輩にアドバイスを。

大西 うーん……。仲間を大事にしてそして必死になってください。必死になっていると皆が心配して助けてくれるものですから(笑)。

――最後に映画業界に大いにアピールしてください。

大西 “田舎もん”作品ならば誰にも負けません。よろしくお願いします!

――どうもありがとうございました。活躍を期待しています。


 大西監督は日本映画学校を卒業後、アルバイトなどの傍ら商業映画作品の脚本執筆に携わっているという。今年度の日本映画学校「卒業制作上映会」での『おってくらんし』上映は、2月26日11時~の1回限り。予告編はこちら。上映会の詳細は公式サイトで。

 日本映画学校を母体にした日本映画大学は4月開学する。3月には同校過去の優秀卒業制作を集めた上映会が開催予定で、『おってくらんし』もラインナップに含まれる。
(了)

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。


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