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大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.13

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大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.13

2011年01月18日

◎正月興行の2分割案浮上、正月休みまでもたない作品続々

 この時期になると、正月興行の第2弾作品といって、正月明けの新作が登場してくる。すでに何本かの作品が公開されているが、いずれも大ヒットまではいっていない。正月からの低迷が、いまだ続いている状況だと言っていい。ただここにきて、正月興行第2弾作品云々の前に、正月興行自体を見直したらどうかという案が浮上してきた。

 正月興行を、2分割したらどうかというのである。つまり、正月の休みを視野に入れたいわゆる正月興行の主要作品の公開を、夏興行のように前半と後半に分けたらどうかというのだが、さて、これはどうだろうか。これは、ある配給会社の営業担当者が私に指摘した提案である。

 背景に、正月興行の作品が比較的早い時期に公開されるケースが増えて、肝心要の正月休みあたりになると、興行が失速してしまうケースが多くなっていることが挙げられる。2011年の正月興行作品でいえば、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」(11月19日公開)と「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(12月1日公開)の2本が、これにあたる。

 周知のように、最近の映画興行は公開からほんの2、3週間程度で大きな興収を稼いでしまう。それ以上の期間でも安定した成績を持続できるのは、非常に稀であり、最終興収50億円以上の作品にして、7、8週をもちこたえるのは難しい情勢になっている。こうした興行傾向から、2分割案が持ち上がったのである。

 12月25日あたりで区切れるのならいいのだが、ただし現実問題として、クリスマス時期や正月休みを動員の視野に入れている大作は、たとえ公開時期が早かろうと、正月休みを迎える前に公開を打ち切るのは難しいと思われる。それなら、1月年明けのかなり早い時期、つまり成人の日をはさんだ1月上旬公開の作品に、大作を揃えることならできるのではないか。私は、そう考える。

 今年なら、1月7日公開の「アンストッパブル」があった。こうした時期に、ハリウッド大作や邦画の話題作を数本並べることで、正月休みにもたなくなっている作品との“引き継ぎ”を行っていく。場あたり的に、それを行うのではなく、その時期の興行の大きな底上げを意図して、全社が足並みを揃える。これなら、できないことはないのではないか。

 映画界は今、様々な領域で意識を変える必要があると思う。正月興行が厳しい。作品がない。洋画離れ。といったお題目を呟いているだけでは、事態に何らの変化は見いだせない。一つ一つ、当り前になっている事象に疑いの目をもち、改革していくことが必要ではないのか。

 今、そうしたことに手をつけていかないと、いずれ大変なことになる。とりあえず、今私が指摘したことを、配給、興行関係者の方々にはじっくり考えていただきたいと思う。
                                                      (大高宏雄)



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