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インタビュー:杉山知之 デジタルハリウッド大学学長 工学博士

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インタビュー:杉山知之 デジタルハリウッド大学学長 工学博士

2009年12月16日

     卒業生たちとフルCGアニメにトライしたい!
          世界中の人が来て学べる学校作りが新たな目標

  

 1994年10月、東京・御茶ノ水に設立されクリエイター養成スクール「デジタルハリウッド」が、この10月に創立15周年を迎えた。
 設立当時は“デジタルクリエイター”という言葉もなかった時代。デジハリは卒業生と共にデジタルコンテンツを新しい産業として拡げることを目標に活動。96年、コンテンツ制作会社「アイ・エム・ジェイ」設立を皮切りに、多くのITベンチャーの起業に携わるなど常に業界と密接につながり、02年には、多数の業界企業関係者が登録する「デジタルハリウッド・パートナーズ」を組織。インターンシップやOJTなど業界を巻き込んだ様々な取り組みを実行、業界との強固な関係を形成してきた。
 杉山氏は、04年に日本初の株式会社立「デジタルハリウッド大学院」、翌年に「デジタルハリウッド大学」を開学し、次世代のビジネスをプロデュースする人材開発、クール・ジャパンの創造を展開。この15年を振り返りつつ、日本のコンテンツ産業や今後の人材育成、事業展開などについて聞いた―。



15年の積み重ね

――日本のコンテンツ産業の中で、デジハリは大きな役割を果たしてきたと思うのですが、まずこの15年を振り返って頂けますか。

杉山 思ったように社会は変化してきたと思いますが、皆さん思い出して欲しいのは、15年前と今は何もかも違うんですよね。そういう意味では、現代人は恐ろしい変化に関わらざるを得ないという、もの凄く大変だろうなという感じがあります。もの凄い変化が起きるというのはわかっていたわけですよ、1990年くらいから、とんでもなく大変な変化になるなと。だから、その変化を逆に起こす側の人を育成したいということでした。そのためには、「デジタル・コミュニケーション」と僕らは言ってますけど、何かそのコンピューターを利用する力をつけてもらいたい。自分の言いたいことぐらい表現できる力をつけてもらいたい。それはCGでもウェブでも、もちろんなんでもいいんですけど、そういう思いでやってきたので、15年というのは確かに結構積み重ねが効いていて、お陰さまで卒業生も4万人を超えています。いま、例えば日本の邦画を見ていて、エンドロールにうちの卒業生の名前がない方が珍しくなったし、自分でウェブ製作会社とかを作ってやっている人は沢山いる。CGプロダクションの社長さんも沢山いるし、それから大きな会社に入った人は部長クラス、取締役になっている人も出ているので、そういう意味ではデジハリという学校の役割は果たしてきていると。

 それと当初の目的であった高度な人材という意味での大学院ですね。これも本当に僕たちはラッキーで、小泉政権誕生のお蔭で思っていたよりは早く実現出来た。ちゃんと認可の大学院として出発できて6年目なので、そういう意味では、会社の流れで言えばずっと運のいい会社です。普通に考えたら不可能そうなことを15年間よくやってきいたなという思いもあるんです、本当に。無謀なんですよね、今考えると。その時々に出会った人たちのお蔭で出来ているんです。そういう面でありがたいなと思いますし、あとサンタモニカにも学校を作って、そこから随分ハリウッドで働く人をちゃんと輩出できました。15年という流れの中で、もちろん上手く行かなくなってやめたものもありましたけど、どれもこれもそれなりに足跡を残してやってきたし、結局はコンテンツの産業人という人は残せて来ているので、もしその社会的役割というのが僕らにあるとしたら、ちょっとずつ15年重ねてこれたなというのが一つの思いです。大学まで出来ているのは出来過ぎかもしれないですね。

日本映画界について

――映画寄りのお話を伺いたいのですが、数年前より洋画と邦画の興収シェアが逆転したりしていますが、映画人口を見ると伸び悩んでいるのが現状です。映画産業をどのように見られていますか。

杉山 日本人が世界の最先端を走っているということを、もう一回理解しなければいけない段階に来ているのではないでしょうか。それは経済が駄目だとか、問題百出は認めた上で、でも、ある種人と人がつながって、どんな風に生活の中で時間を過ごすかというような生活スタイルみたいな面では特化して、日本人は近未来にいるんですよ。他の国と日本の国を同じように比べにくいんですが、そこをもうちょっと映画界の方々も理解しなければいけないのではないでしょうか。高校生などは、凄い感覚が違って、コミュニケーションとか、人とつながるとか、生活の時間をどう使うかで、先行っているマーケットだということを認識しなければならない。最先端の生活スタイルが日本で起きているということを、もっとリサーチしていくのがいいのかなと。

 日本は特化してケータイ文化が進んだけども、そういうものを常に使って、常に何かやっているということ、先端を走っている社会というものと、これまでの映画業界というものをどう合わせていくのかという視点を入れていくともっといいかもしれないですね。別に誰も映画を嫌いになっていなくて、映画を観る時間があれば見たいと思っている。うちの大学でも映画監督になりたい、映画の仕事をしたいという人は沢山いるんです。それはいいことだと思うんですよ業界にとって。常に次のチャレンジャー、制作者たちがやりたいことと現実のお客様たちをどうつなげていくかという、いろんなトライがいるんだと思いますね。

――映画にはまだ可能性があると。

杉山 まだありますよ。二つの方向なんですけど、まずVFXという部分で育った人たちが監督として活躍し始めていると思うんですよね。TBSの曽利文彦さんや、「BALLAD 名もなき恋のうた」を監督した山崎貴さん、「GOEMON」の紀里谷和明監督など、みんなCG制作の経験があるので、こういった監督さんたちは、頭の中で見える画は作れるんですよね、どんな凄い画でも。これまでカメラで撮ると考えれば、ないものは撮れない。ロケ地だって、昔のものが失われていたらどこ撮るんだとなってしまう。でも、VFXをわかっている監督は、ほんの一部だけでも残っていれば、お金がなくても凄いスケールのものまで作れる。その中で日本人らしいきめ細やかなストーリーがまだまだアジアでは戦う余地はあるんじゃないかと思うんです。

 なぜかというと、日本のJミPOP的なもの、芸能界的なものは結構韓国、台湾、東南アジアとかで、それなりに受けたりするわけですよね。同じように映画もそこに乗っていくというのはあると思います。我々だって韓国映画が面白いと思っているわけだし、そういう境はアジアという意味では、凄くコンテンツが流通できる。仕組みでなくて、我々観客が気にせずお互いのものが見られる感じにはなってきていると思います。

 ただ、世界配給となるとなかなかアジア人が主演をやっているということで、世界でヒットするって難しい面もありますよね。そこを超えるのが、僕はアニメだと思っているんですね。日本の伝統的なアニメというか、スタイルが出来ていたんですけど、世界的に展開していく時に、これも丁度いいことが起きているんですが、CGをやってきた人たちと、これまでの2次元のアニメをやってきた人たちが、やっと本格的に協力をし始めているんです。初めてそこまで一緒にやれた例というのが「ホッタラケの島 遥と魔法の鏡」だと思うんですよ。それから12月公開の「よなよなペンギン」ですね。どっちも伝統的なアニメの人と、フルCGアニメの人ががっぷり四つでやっている。いや、これまでもそんなのあるじゃないかというかもしれませんが、結構そうじゃなくて、現場はバラけていて、最後に合わせているみたいな感じだったんですね。人材交流はちゃんとは行われていなかったんです。アニメ産業とCGアニメって全然違っていて、それがやっとくっついたことによって、日本のスタイルみたいなものが出来て、日本のアニメ映画の深いテーマ性だったり、素晴らしいストーリーみたいなものが、現代的な表現に合わさっていくと、これは世界配給で勝てる可能性は物凄くあると思うんです。だから、今年はそういう意味では、「ホッタラケの島」と「よなよなペンギン」で結構重要な年なんじゃないですかね。

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