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トップインタビュー:加藤鉄也東芝エンタテインメント(株)代表取締役社長

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トップインタビュー:加藤鉄也東芝エンタテインメント(株)代表取締役社長

2006年10月02日
俺の骨は、この会社に埋めよう
洋画が低迷、邦画が好調/高い映画は買い付けない
洋画だけでは経営不可能/邦画の製作・配給に本腰


        独立系の配給会社には今、逆風が吹いている
         洋画の不振が主因だが、東芝も例外ではない
         経営改善なるか、加藤社長の手腕が試される



 今年10月1日、東芝エンタテインメント(株)は発足から3周年を迎える。代表取締役社長の加藤鉄也氏は「とにかくチャンレジの3年だった」と振り返る。
 同社の母体はアミューズピクチャーズ(株)。03年4月1日付で(株)東芝が(株)アミューズからアミューズピクチャーズの株式67%を取得し子会社化、宮下昌幸氏に代わって加藤氏が社長に就任した。半年後の10月1日、東芝が残る33%の株式を取得し、アミューズピクチャーズは東芝の100%子会社となった。と同時に社名を東芝エンタテインメントに変更し、東芝デジタルフロンティア㈱のデジタルコンテンツ事業部も統合されて、新体制をスタートさせた。
 この3年、東芝エンタテインメントの業績は良好ではなかった。背景には、洋画配給事業への逆風がある。しかし、加藤社長の表情は明るい。「次の3年は利益体質を作ること、映画への夢を追いかけること、その両方を達成したい」。
 東芝エンタテインメントは第2ステージへと踏み出した。



洋画が低迷、邦画が好調

――5月に公開したサッカー3部作の第1弾「GOAL!」は期待作だったわけですが、厳しい成績となりましたが、ここ数年は洋画の興行が低迷し、インディペンデントの配給会社が経営的に難しくなっています。この現状をどう見ていますか。

加藤 洋画、良くないですよね。その中で一番煽りを食っているのは、やはりインディペンデントです。メジャー各社はそれなりに目玉となる超大作が周期的にあって、今年の夏もメジャーは大作を揃えてきて、数字になっている。今年前半はメジャーですら厳しかったけど、結局は挽回する。でもインディペンデントにはこういうことはあまりなくて、今年は正月に東宝東和さんが配給した「Mr.&Mrs.スミス」(興収47億円)だけで、他に10億円を超えた作品はありません。御多分に漏れず、当社も10億円を狙っていった作品はあったけど、実際には10億円を超えた作品がなかったというのが現状です。


――洋画が当たらない理由は何でしょうか。

加藤 洋画が弱いというより、邦画にお客さんを取られていると僕は捉えています。まず映画全体のパイを見た場合に大きくは伸びていない。興収で言えば2000億円のラインでずっと来ているわけです。要はその中でのミックスの問題で、洋画が悪い分、邦画が良くなっている。洋画はリメイクばかりでアイデア、企画力が枯渇しているってよく言われますけど、僕はそんな感じはありません。何かの焼き直しでも、お客さんが来るものはあるわけですから。


――では、逆に邦画が好調な理由は何だと考えていますか。

加藤 やっぱり日本の文化が、テレビに根差しているということが原点にあるような気がします。邦画がヒットするといっても、その殆どが地上波のテレビ局のバックアップがあってこそ。テレビ局各社は映画の放映枠が減る中でも、自社が出資する作品に関しては徹底的にバックアップするわけです。中身の良し悪しも当然あるけれども、それ以前に浮動層はテレビで刷り込まれる。テレビ局がスポットであったり、特番であったり、役者の稼働であったりと電波ジャックすることで、お茶の間で何の気なしにテレビを見ている人が、ある映画に一気に押し寄せるという構図がここ2、3年で顕著になっていると思いますね。



高い映画は買い付けない

――洋画が厳しいという現状で、東芝エンタテインメントは洋画に対してどのように取り組んでいくのでしょうか。

加藤 結論から言うと、良い作品を厳選する、権利料を抑えてリスクを抑えるということです。インディペントの洋画配給は非常にリスクが大きいわけです。よっぽど中身が良いか、よっぽど突出したモノがある作品でないと買いません。ただし良い作品を厳選して買うといっても、買い付けの競争が生じるわけですから、簡単ではないですよね。競争の結果、今までのような高騰した価格だったら、インディペンデントは生き残れないでしょう。


――各マーケットでの日本の会社の買い付け状況はどうなっていますか。一時に比べれば、落ち着いてきたとの話も聞きましたが。

加藤 権利料が一旦沈静化しそうな動きもありましたが、相変わらず高い状態が続いています。みんなが買い控えしていても、必ず買う人が現れる、買う人が現れればセラーは必ず値段を吊り上げますから。しかし面白いことに、最後に上乗せして取りにいった金額分だけ、平均して最終的にマイナスになりますね。結局のところ最後に競って吊り上がった分は相場より高いということなんです。バイヤーは経験値に基づいて権利料を算定するわけですから、その数字は正しいんですね。しかし実際には、その適正価格より遥か上のところで契約が決まっている。需要と供給のバランスと言えばそれまでですが、買い付けの仕方がおかしいと思っています。オーバープライスになって、みんなが損する仕組みになっている。高いと思ったら、買わなければいいんです。
日本のバイヤーにも問題があると思っています。買うこと自体に意味を感じる日本人バイヤーがいかに多いことかと驚きます。“あいつに買われたら負けだ、買えば勝ちだ”と意地になるんですね。ビジネスとしての採算を度外視して、買うこと自体が目的となっています。買うことは手段であって目的ではない。こういうバイヤーが多いということが、日本のインディペンデントが配給する洋画が不調である大きな原因の一つだと思っています。


――韓国映画の買い付けは今後どうしますか。東芝エンタテインメントは、旧アミューズピクチャーズ時代から韓国映画に積極的でしたが。

加藤 韓国映画も今は権利料が高すぎて、全くどうしようもない状況です。韓国映画は製作費より高い権利料を日本から取るようなマーケットになってしまいました。当社も人気俳優が出演する韓流モノだけでなく、「オールド・ボーイ」のような質の高い作品を買い付けて、そこそこの成績を出せる時期もありましたが、今となってはオーバープライスで手が出せません。今秋公開の「ユア・マイ・サンシャイン」以降、当社で買い付けた韓国映画はありません。配給委託の話はありますが、自前では今は在庫ナシです。


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