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トップインタビュー:角川春樹 角川春樹事務所 特別顧問

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トップインタビュー:角川春樹 角川春樹事務所 特別顧問

2006年05月26日
我はチンギス・ハーンなり
  日本映画界は語る価値なし!と一刀両断
  映画は表現のひとつ、壮大な構想とは――


日本映画界への復帰第1弾「男たちの大和/YAMATO」(東映配給)が興収50億円の大ヒットを記録した春樹氏。確かな手応えを得たものと思いきや、「満足度は半分。見込みの半分しかいっていないのにヒットという表現は使えない」とあっさり。

ヒットの要因を聞いても、「映画というのは賭けだとは全く思っていない。映画会社にとってはそういう考え方もあるかもしれないが、私はそうではない。『~大和』を含め今まで私が作った作品は67本になりますが、うち9割は少なくとも採算点に達していて、そのうち6割は利益を上げている。ですから、要するに私としてはヒットの分析なんていうものは先にしているわけだから、当たった要因を探るのではなくて、当てた要因ということに私の場合はなる。毎回毎回新しいことをやるわけだから、次に生きてくる反省があればいい。『~大和』では私の中でも次に生きてくる反省があった」と、50億円のヒットに浮かれることなど微塵もない。

その反省点を生かし復帰第2弾として次に取り組むのが、初の日本・モンゴル合作映画「蒼き狼~地果て海尽きるまで~」(松竹配給)。06年はモンゴル建国800年にあたる。この映画は建国800年に相応しい記念碑として、モンゴル建国の英雄“蒼き狼の子孫”テムジン=チンギス・ハーンが、モンゴル高原の覇者となり、人類史上最大の帝国を築いた軌跡を総製作費30億円を投じ、壮大なスケールで描く歴史超大作。

だが、なぜ春樹氏は第2弾に“チンギス・ハーン”を選んだのか。「~大和」の反省点を生かし、この「蒼き狼」で何を成し遂げようとしているのか。自らをハーンと重ね合わせる春樹氏に「~大和」の反省点、「蒼き狼」の狙い、そして今後の展開について聞いた。春樹氏は新たなる帝国を築こうとしているのか。壮大な構想に触れる。

■ネット同時配信を構想

――ヒットした理由ではなく、では逆に興収100億円に届かなかった原因はどこにあったと。

作品のテーマです。このテーマというのは二律背反なんですよ。戦後60周年という形でテーマを押していったわけですから、この押していったことによって 50億円に達したとも言えるし、逆に押していったことによって、戦争映画というものがはじめから若い女性に距離を置いてしまったということ。いかに内容が感動ドラマであると伝えても、戦争映画であるということだけで引かれてしまった。
また致命的なことなんですが、今の観客の質が低下しましたね。これは大きい。文学に対してもそう。質の高い文学を読む力が半減以下になっている。これはアメリカ映画、文学に関しても同じ。物凄く質が低落した。だから純度の高い映画を作っても、テレビの子会社のような映画の作り方の方が受け入れられやすくなっている。

――東映とのコラボレーションは上手く行ったのでしょうか。

プラス面だけいうのは簡単ですけどね。これは前売りを両社が60万枚完璧に実売として売ったんですけど、それは観客動員につながったと思いますよ。うち自身でも13万7千枚販売しましたからね。でもそれが全員来ているわけではない。マル春マーク付ですからはっきりわかる。東映が売ったものと比べるとあまり来てくれなかった。だけど、枚数を売るという面に関しては東映と組んだことがプラスになった。

――製作前に思い描いていた、狙い通りの展開は出来ましたか。

ソフトバンクの孫正義氏との約束だったんだけど、公開と同時にヤフーで配信するはずだった。1800円取ってね。でも、東映はシネコン戦争中の今だと反発を食らうと。だけど課金で実際に見るのは0・5%だぞと岡田裕介社長に言った。映画館に来られない人間が1800円払って見るだけで、パソコンの画面で見るんだから大したことないと。でも、興行者が理解してくれないという。それじゃあ私が話をしてやろうかと言ったら、「角川さんの前だったらみんなノーとはいいませんよ。でも最終的に、私に回ってきて私が突付かれることになる」と言うので断念した。その代わり、ネット上で試写会をやったりしたが。

これは東映だから果たせなかったということではない。つまり私が言いたいことは、ネット、モバイルを「~大和」で全面的に使ったわけではないんですよ。今回の「蒼き狼」では、ヤフーも出資し、そしてモバイルでも今度エイベックスと組むことによって、お互いに協力体制でやっているわけです。「女優オーディション」をやったら、ドワンゴ(着うた配信など)のサイト含め、アクセス数は30万アクセスを超えた。30万アクセスした人間は一応関心があるわけだから、これに対してもフォローしようと話し合っている。

――「蒼き狼」では、ネットでの同時配信が出来そうだということですか。

その反省点は生かせる部分と、全然生かせないものがあるということ。有料課金によるネット配信は松竹も出来ないかもしれない。1800円取るとは言っても、映画館の入場料金の平均は1300円だからね。24時間見放題で、コピー出来ないようになっているといっても、それでもされるんだと言われるのも仕方ない。そこまで考えたら何も出来ない。その部分はもう日本の興行環境の話に踏み込むことになる。ただ、今回ヤフーと確実にやるのは、ヤフーがバナー広告を無料で提供する。その効果は金額に換算して2億円規模ですよ。出資とは別に。うちもバナー広告として2000万円打つ。だからそういう意味で徹底的に今回は、はじめから巻き込んだ形で話をつけていってやろうと考えている。

それからもう一つ出来なかったことというのがゲーム化ですよ。今回は公開前にPCゲーム、公開後にオンライン・ゲーム化する。ゲーム会社も出資し、PCゲームからパチスロまで落とします。それでフィールズとも組んでいる。だから収益の構造としては、今回の方が大きい。

――「~大和」の直接製作費は約15億円、P&A含めると約20億円強くらいと聞いていますが、角川さんはいくら出資されたのですか。

角川としては3億5千万円を出資しました。


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