閲覧中のページ:トップ > 文化通信バラエティ > エンタメ・トピックス >

“日本は重要な市場” アメリカ映画協会 クリストファー・J・ドッド会長に聞く

エンタメ・トピックス

最新記事

“日本は重要な市場” アメリカ映画協会 クリストファー・J・ドッド会長に聞く

2017年12月26日

クリストファー・J・ドッドMPAA会長.jpg



 米メジャースタジオ6社をメンバーとするアメリカの映画産業団体「アメリカ映画協会」(MPAA)のクリストファー・J・ドッド会長兼CEO(=写真)が、第30回東京国際映画祭に合わせて10月に来日。当誌のインタビューに応じた。

 前アメリカ合衆国上院議員のドッド氏が現職に就いたのは2011年3月。以来、同協会の活動を指揮し、中国映画業界とハリウッドスタジオの関係強化や、著作権の保護、映画人育成などに尽力してきた。

 約7年間同職を務めてきたドッド氏だが、2017年12月末をもって辞任することと、後任として元米国務次官補のチャールズ・リヴキン氏が決まったことを先ごろ発表した。勇退を間近に控える中での来日となったドッド氏が、現在の映画業界に思うこととは――。





重要な日本市場


――まず、MPAAのメジャースタジオ(ソニー・ピクチャーズ、ディズニー、パラマウント、フォックス、ユニバーサル、ワーナー)にとって、日本市場とはどのような存在なのでしょうか。アジアでは近年、中国映画市場の拡大が著しく、大きな存在になっています。

ドッド会長兼CEO(以下、ドッド) 日本は非常に重要な市場です。日本のフィルムマーケットは、アメリカと中国に次いで世界第3位です。昨年の興収は21億6千万ドル相当で、入場者数は1億8千万人でした。日本では年間で1千以上の映画が上映されています。今のご質問に答えるために、最も重要な数字を挙げたいと思います。それは、日本は2012年から2016年の期間で、入場者数が16%も上昇しているということです。日本以外でこれほど上昇した国は聞いたことがありません。MPAAのスタジオと日本の関係についてですが、いつも右肩上がりで進んでいるわけではなく、浮き沈みがあることは事実です。しかし、日本の映画ファンは質が良く、作品の多様性も求めています。映画に行く年齢層ですが、一般的には18~24歳、12~17歳の層が重要です。しかし、日本に関しては、その層よりももう少し洗練された映画愛好家が多いので、私は何も心配していません。協会としても、日本国際映画著作権協会(JIMCA)との関係は非常に強く、協力し合っています。

――日本市場は独特の難しさもあると思いますが。

ドッド会長 世界で大ヒットしている作品でも、国によっては当たらないこともあります。もちろん、映画業界としては特定のマーケットに向けて作品を製作することはできませんが、それによって日本市場の重要性が低くなるわけではありません。


A・ファルハディ監督も受賞

――MPAA(およびMPAAの海外代理団体のMPA)は、世界中で映画制作者のサポートをしていますよね。具体的に、どのような事例がありますか。

ドッド 日本では、本日(10月27日)午後から東京国際映画祭との共催でセミナーを開催します。そこではオンラインのコンテンツ保護のアドボカシー(主張)活動をするのが目的で、特に「サイトブロッキング」に焦点を当て、日本国内外の専門家を招いて議論を行います。日本滞在中には、映団連やCODA(コンテンツ海外流通促進機構)、内閣府知財戦略推進事務局とも会合を持ちました。MPAとJIMCAは非常に緊密な関係を持ってこれまでも協力してきていますし、イギリスの有名な映画プロデューサーであるデヴィッド・パットナムによるマスタークラスも日本で開いています。デジタルハリウッド大学との協力もあります。世界各地で3千以上の映画祭が行われていますが、この7年間で私が複数回参加した映画祭は、東京と、あと1つか2つです。それはこの市場が重要だからです。歴史的に見ても、日本の映画業界とは、単に表に出る映画だけでなく、もっと下にあらゆるレベルで協力関係にあります。

 今申し上げたのは日本におけるMPAの活動でしたが、ほかの国で行っているものとして、2つの活動を紹介します。私たちは、アジア太平洋地域は映画の将来を握っている非常に重要な地域だと思っており、映画のシナリオのアワードである「アジア・パシフィック・スクリーン・アワード(APSA)」を毎年開催しています。開催地はオーストラリアですが、アジア太平洋地域の様々な国から映画のシナリオが集まっています。今年は、東京国際映画祭のプログラミング・ディレクターを担当されている矢田部吉彦さんにも審査員を務めてもらいます。さらに、MPAとAPSAが共同でファンドを設立し、アワードで受賞した4作品に、それぞれ2万5千ドルの補助金を提供して新進の映画製作者をサポートしています。これまでに、アスガー・ファルハディ監督(『別離』で受賞)や、ジャファル・パナヒ監督らが補助を受けました。

 もう1つは、「トロップ・フェス」という、アジア由来の短編映画のフェスを支援しています。新しい才能を見出すためのプログラムで、いくつかの国で開催されており、MPAはそのグローバルサポーターを務めています。ホームイベントは毎年2月にオーストラリアのシドニーで行われており、受賞者には映画漬けのロサンゼルス5日間コースをプレゼントしています。このように、アジア太平洋地域に深く関わりを持っており、その中で日本も大きく関与してくれています。


続きは、文化通信ジャーナル2017年12月号に掲載。

文化通信ジャーナルのご購入、定期購読のお申し込みはコチラ

関連記事

過去のタイトル一覧

2024年

3月

2023年

2月│ 3月│ 10月

2022年

3月│ 5月│ 7月│ 8月│ 12月

2021年

2月│ 3月│ 10月

2020年

10月│ 11月│ 12月

2019年

2月│ 4月│ 5月│ 7月│ 8月│ 10月│ 11月

2018年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2017年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2016年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2015年

3月│ 4月│ 6月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2014年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月

2013年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2012年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2011年

2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2010年

1月│ 2月│ 4月│ 6月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2009年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月

2008年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2007年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月

2006年

1月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月