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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.130】
6月も大幅落ち込み、3D映画への不安

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.130】
6月も大幅落ち込み、3D映画への不安

2013年06月27日

 早くも6月末である。前回、配給13社の1~5月の累計興収を踏まえて、前半部分の “貯金を切り崩す” 状況を記したが、6月も厳しい成績となっている。あるシネコンでは、6月の興収が昨年6月の70%ほどになるという。さらに60%というシネコンもあるというから、大変である。全体でも、これに準じるだろう。

 5月から6月にかけて公開された作品では、邦画が「クロユリ団地」「奇跡のリンゴ」「リアル-完全なる首長竜の日-」「俺はまだ本気出してないだけ」「二流小説家-シリアリスト-」「100回泣くこと」など。洋画が「オブリビオン」「G.Iジョー バック2リベンジ」「アフター・アース」「華麗なるギャツビー」「エンド・オブ・ホワイトハウス」「グランド・マスター」など。

 興収上位作品の少数が、かろうじて10億円を超える程度で、20億円を超える作品は1本もない。昨年では、20億円を超えた作品は5月(公開)に2本、6月(同)に1本あった。意外や邦画はなく、洋画のみだったが、この差が今年6月の60~70%という興収減になっている。作品別の成績を見る限りにおいて、もはや邦画だとか洋画だとか言っている場合ではなくなった。

 「今年前半、洋画の復調が話題になったが、それも過去の話になったと思いますね」とは、ある興行会社の担当者である。復調は限定的であったのか、一過性であったのか。5月から6月の洋画の成績を見れば、確かに復調状態は吹っ飛んだ。

 上半期の分析はまた、作品別の成績が明らかになった時点で行うとして、一つ気になることがある。米製3D映画の存在価値が見えなくなっているのではないかということだ。あるシネコンに聞けば、観客側から2D版で上映してほしいとの要望が強いと聞く。そうした要望を踏まえ、上映中の「華麗なるギャツビー」は、2D版での上映を多くしたというが、果たしてこうした状態でいいのだろうか。

 年に1、2本の超大作3D映画は、何とか恰好がつくだろう。ただ、それ以外の米製娯楽作品の3D映画は、日本のマーケットのなかで、 “お荷物” になってしまわないか。私の不安は、3D映画が観客のニーズを獲得しえず、ただ単に上映しているだけに過ぎなくなることである。

 米映画界は、全米大ヒットの「マン・オブ・スティール」など、すでに夏興行まっただ中であるが、本作も含め、ますます3D映画が多くなっている。こうした3D映画過多状況に、いったいどう対処していくのか。具体策があるとは聞いていない。

(大高宏雄)

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