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視覚障害者と一緒に 日本映画学校、卒制上映会で初の音声ガイダンス

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視覚障害者と一緒に 日本映画学校、卒制上映会で初の音声ガイダンス

2012年03月16日

(左から)河口清恵さん、森重智さん、児玉有紀さん、青江天さん

ドキュメンタリー「Voy! ~ある選手たちの戦い~」イメージ

 日本映画学校は3月3日と4日に平成23年度の卒業制作上映会を東京・スペースFS汐留で行った。視覚障害者スポーツ・ブラインドサッカーを題材にしたドキュメンタリー「Voy! ~ある選手たちの戦い~」では、音声ガイダンスが用意されバリアフリー上映の形がとられた。同校の卒制上映会として初めての試みとなった。

 ブラインドサッカー関係者など視覚障害者たちが多数来場。学生たちが渾身の力を込め完成させた映像作品を“耳”で見て、十二分に堪能。上映後には笑顔があふれた。監督した児玉有紀さんは「(取材した)選手たちにやっと見ていただけたのが本当にうれしい。頑張って作ってよかった」と満足げに話した。

  学生たちが自ら、音声ガイダンスつきで上映することを発案。これを学校側が全面的にサポートし実現に至った。日本映画学校と同地域にあり、バリアフリー上映に詳しい川崎市アートセンターの協力を仰ぎ、必要な専用機材などを準備。学生作品を学生主体でバリアフリー上映するという、全国的に見ても極めてめずらしく画期的な事例となった。

 児玉さんは「音声ガイダンスの原稿も私たちで書いたんです」と胸を張る。プロデュースと録音を担当し森重智さんは「なるべく本編の音を邪魔せず、主観を省き限りなく客観的に、でもしっかり映像を想像させるものにしなければいけないと指導されました。(上映を見た)視覚障害者のみなさんからは、もっと凝ってみても面白いんじゃない? と言われて。それは次への課題ですね」と振り返った。

 学生たちのチャレンジは学校側からも高く評価された。児玉さんは「先生には『これからの自主映画はこういった取り組みをどんどんやっていくべき。より多くの人に見てもらわないといけない自主映画だからこそ、必要なはず』と言ってもらえました」。バリアフリー上映に限らず、日本映画学校、日本映画大学は今後も学生の果敢な挑戦を応援する姿勢だ。

 「Voy! ~ある選手たちの戦い~」は、ロンドンパラリンピック出場を目指すブラインドサッカー日本代表選手らを追ったドキュメンタリー。ハンディをものともせず競技に打ち込む選手たちの真剣な眼差しを捉える一方、その恋愛や友情など日常風景にまでカメラは迫り、単なる“障害者もの”ではない爽やかな作品に仕上がっている。
 
  映像ジャーナルコースの学生たちが制作した。新聞記事でブラインドサッカーを知った児玉さんが競技に魅せられ、2年がかりで取材を重ねるなかで、森重さんをはじめ、撮影の青江天さん、編集の河口清恵さんらが合流。のべ120時間におよんだ収録素材は最終的に40分にまとめられ、スタッフのチームワークの良さがしっかりと刻み込まれた。

 卒業制作上映会を終えたが、すでに各所からオファーがあり、今後さらに別の形で見られる機会もありそうだ。スタッフ4人は学校を卒業後、それぞれ別の道に進むというが、長編へのバージョンアップも期待したい。

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。

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