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モバキャスの加入目標は大丈夫か

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モバキャスの加入目標は大丈夫か

2011年12月15日

 一大事業となる放送サービスが来春スタートする。アナログ跡地を使った、地上波による携帯向けマルチメディア放送「モバキャス」だ。その母体となる事業会社、mmbiが先頃、資本金500億円近い規模(うち約半分は資本準備金)に増資した。NTTドコモを筆頭株主に、民放キー局、大手メーカー、大手代理店らが揃い、オールジャパン体制で臨む。主にスマホ向けに多彩なサービスを提供するが、対応端末はドコモが来春投入する。つまりはゼロからのスタートで、膨大な資本金額にあって、まさに一大事業なのだ。

 これだけ大規模な投資を伴う新たな放送サービスは、04年10月開始した、あのモバイル放送「モバHO!」以来だろう。資本金は同規模の400億円クラスだった。しかも、移動体向けマルチメディア放送という同種のサービス。違うのは、モバHO!が衛星放送なのに対し、mmbiは地上波(通信も活用)。そして、モバHO!が東芝を筆頭にメーカー主導なのに対し、mmbiがオールジャパン体制ということ。その「モバHO!」は、結局09年3月末でサービス終了となった。スタート時、3年間で150万人の会員獲得を目指したものの、会員は伸びず、サービス開始して4年となる08年秋時点で10万人程度と、予想をはるかに下回り、散々な展開で事業撤退を余儀なくされた。中継局となるギャップフィラー設置の膨大な投資が見合わず経営を圧迫した。

 mmbiはどうか。もっとも「モバキャス」と比べられたら困るだろう。やはりコンテンツが違う。フジテレビを筆頭に放送のプロが送り込まれ、小牧次郎氏がmmbi常務となって編成を指揮する。mmbiの放送局は「NOTTV」。基本利用料は月額420円。リアルタイム型放送3チャンネルを提供する計画で、第1チャンネルでは有名人が続々登場するというソーシャルメディアな番組、ユーザー参加型クイズ等々、多彩な番組をラインナップする予定。第2チャンネルは第1チャンネルの再放送中心に送り、第3チャンネルは24時間ニュースという。リアルタイム型放送とは別に蓄積型放送も行う。初年度の会員獲得目標は100万人だ。

 ただ、気になるのは対応端末。スマホとタブレットで、ドコモからサービス開始までに2機種、以降順次発売し、初年度20機種近くが見込まれている。その発売状況において目標の初年度100万人の達成が懸念される。テレビ局も注力する、相当なパブリシティ展開が予想されるが、気がかりな点だ。何か秘策が隠されているのか。今後詳細が明らかになるコンテンツ内容で展望が見えてきそうだ。

 いまは死後に近い、いわゆる “ニューメディア” 群は、常に普及目標を下回り、減資して体制基盤を整えてきた。BS放送もCS放送もだ。同じオールジャパン的な体制のWOWOWでさえ、2回の減資を繰り返した。mmbiの筆頭株主は6割を占めるNTTドコモだ。民放局参加とはいえ、資本の論理がある。キャリア主導の放送局かつ、オールキャリアではない。そこも気になる点ではある。

(戎 正治)

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