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ソニーHDCAM生産停止、局には支障なし

【FREE】ソニーHDCAM生産停止、局には支障なし

2011年03月22日
 ソニーは今回の震災で、HD向け撮影用ビデオテープ「HDCAM」の製造拠点である多賀城事業所(宮城県多賀城市)が大きな被害を受けた。18日現在で生産停止状態となっており、再開のめどは立っていない。HDCAMテープのシェアは、開発したソニーがほとんどを占めており、震災報道でも需要が高まっている。だが、テレビ局に大きな支障はないとみられる。

 ソニーのHDCAMテープは、ほとんどが子会社「ソニーケミカル&インフォメーションデバイス」の多賀城事業所で生産されている。だが、今回の震災で、仙台塩釜港からわずか2㎞程度の距離に位置する同事業所に大津波が押し寄せ、1階が完全に浸水。一時は2階以上に従業員1千人が避難していた。水が引いた現在も、自宅で過ごせない従業員など数十人が避難しているという。こうした状況にあるため、生産再開のめどは「全く立っていない」(ソニー広報)。

 また、東京・お台場にあるソニーの倉庫は、大きな被害は無かったものの、今回の地震の影響で正常に出荷ができていない状態にある。都内の業務用放送機材販売店では、既に品切れ状態となっており、入荷のめども立っていないという。ソニー以外でHDCAMテープを生産しているメーカーには富士フィルムなどもあるが、こちらも同販売店では「在庫は薄い状態」。それに、ソニーとのシェアの差は歴然で、到底カバーできる生産力は持っていないという。

 地デジ完全移行を見据え、テレビ局ではテープレス化が進んでいるものの、ロケや今回のような震災の現地取材では、まだまだテープが主流。HDCAMテープの生産停止が長期化することになれば、今後の番組制作への影響も考えられる。

 だが、局や制作会社、技術会社には、平時から当然相当数がストックされている。その上、テープは他媒体に保存した後、録画を消去して繰り返し使用できる。このため、今回の事態がテレビ局にすぐ影響を及ぼすとは考えられず、大きな支障はないとみられる。

 テープレス化には機材などの大幅変更が必要となるため、むしろ地方局の方がテープレス化は進んでいるという。キー局の本格的なテープレス化は、来年以降になる見込みだが、テープは使い回しができるので、コスト面から見ても当面活用される模様だ。

 なお、キー局でソニーのテープを主に使用しているのはフジテレビなど。TBSテレビでは、パナソニック「DVCPRO」のテープを使用している。
※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。