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『ムーンライト』、発売で宇野、西寺トーク

【FREE】『ムーンライト』、発売で宇野、西寺トーク

2017年09月26日
『ムーンライト』発売イベント、左から宇野、西寺 『ムーンライト』発売イベント、左から宇野、西寺

 第89回アカデミー賞で作品賞、脚色賞、助演男優賞を受賞し、5部門にノミネートした話題作『ムーンライト』のBD&DVDリリース記念イベントが21日夜、都内のLOFT9 shibuyaで開催され、映画・音楽ジャーナリストの宇野維正、NONA REEVESのボーカルで音楽プロデューサーの西寺郷太が登壇した。

 同作は、ある黒人男性の成長物語。名前はシャロン。成長につれ、リトル、シャロン、ブラックと呼び名が変わっていく。この3つの時代のパートを3人の役者が演じ、監督のバリー・ジェンキンスは、マイノリティのテーマを超え、アイデンティティに向きあう男の姿を映し出した。

 トークは撮影秘話からスタートした。宇野が「監督は見た目で3人の役者を選んだわけではなく、目が同じ輝きをしているかどうかで選んでいる」と切り出すと、西寺は「同じ人物だけどあえて3人を似せてない。また、3人の役者は撮影中に会わせないようにして撮影していて、入念なリハーサルをするのではなく、会った時のふとした彼らの感覚で演技している。監督はその瞬間をパンと抑えていて、ジャズ的とも言える、混ぜ合せの妙をすごく感じた」とし、「人間の本質を描き出していて、人間は変われないし、変われるんだというテーマがとても良かった」と絶賛した。

 さらに2人は、製作背景にトークを展開した。同作の製作は、黒人をテーマに扱った『それでも夜が明ける』『グローリー/明日への行進』を生みだしてきた、ブラッド・ピット率いる映画会社「プランB」。西寺が「プランBがあまり予算を掛けずに製作した、マイノリティがテーマの『ムーンライト』という作品が、オスカーに輝いたことがもっと広まってもいいと思う」と首をかしげると、宇野は「本当にそう。アカデミー賞を争った『ラ・ラ・ランド』との比較で、ハリウッドの人種主義にからめて語られたりもしていたけど、『ラ・ラ・ランド』はホワイトで『ムーンライト』はブラック、みたいな単純なアングルではない。白人であっても黒人であっても、アート全般に造詣の深い優秀なスタッフが当たり前のように表舞台で活躍して、アカデミー賞のような権威もさすがにそれを評価しないわけにはいかない、そういう時代がようやくやって来たということ」と論を展開した。

 その他、物語のもとになった戯曲名「In Moonlight Black Boys Look Blue(月の光の下で、美しいブルーに輝く)」の響きを2人して「カッコ良い!」と興奮気味に話すなど、『ムーンライト』の魅力を存分にアピールした。

 15日よりリリースされたBD&DVDについて西寺は「パッケージも洒落ていて所有欲をそそる。90年代後半に多くの人が『トレインスポッティング』のポスターを部屋に貼ったのと同じ感覚かも。カッコ良いことでカッコ悪いことかもしれないけれど(笑)、強烈にセンスやリテラシー、知識など自分の立ち位置を示す作品。紛れもない名作ですね」とコメント。発売元カルチュア・パブリッシャーズ、販売元TCエンタテインメント。

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。